『虚像の道化師』とは
『虚像の道化師』は、東野圭吾によるガリレオシリーズ第7弾の連作推理小説。2012年に文藝春秋から単行本として刊行され、2015年には「禁断の魔術 ガリレオ8」に収録されていた「透視す」「曲球る」「念波る」の3編を追加収録し、全7編の文庫版として再編集された。ガリレオシリーズの短編集としては第4作目にあたり、科学者・湯川学が超常現象やオカルトと思われる怪事件の謎に挑む姿を描いている。
本作では、湯川が科学的思考と論理で不可解な事件の謎を解き明かすと同時に、関わる人々の心情や人間ドラマにも触れていく。湯川と草薙、そして内海薫らが、それぞれの立場で事件解決に挑む場面が特徴的である。ガリレオシリーズならではの緻密なトリックとスリリングな展開が魅力の一冊。
『虚像の道化師』の あらすじ
第1章:幻惑す(まどわす)
宗教法人「クアイの会」で信者の男性が5階の窓から転落死した。教祖・連崎至光は「自分が念を送ったことで死んだ」と自首する。記者・里中奈美はその現場を目撃しており、教祖が一切触れることなく男性を窓から飛び降りさせたと証言する。
湯川は、念だけで人を死に追いやることができるのかという疑問に対し、科学的な視点から事件を分析していく。果たして教祖の超能力は本物なのか?湯川が導き出した真相とは。
第2章:透視す(みとおす)
草薙に誘われて訪れた銀座のクラブで、湯川は透視能力を持つホステス・アイと出会う。名刺を見ずに湯川の名字や職業を言い当てる彼女に驚きつつも、湯川はその能力の仕組みに疑問を抱く。
数か月後、アイが荒川沿いで遺体となって発見される。事件の真相と彼女の透視能力の秘密に湯川が挑む。
第3章:心聴る(きこえる)
営業部長・早見達郎が自宅マンションから飛び降り自殺する。2か月後、病院で幻聴に苦しむ男・加山が暴れ、草薙が取り押さえるも腹部を刺されてしまう。加山は早見の部下だったことが判明し、2つの事件の関連性を疑った草薙は湯川に相談する。
特定の人間に幻聴を聞かせることは可能なのか。湯川は幻聴の正体を科学的に解明する。
第4章:曲球る(まがる)
プロ野球選手・柳沢の妻が殺害される。捜査は迅速に進み犯人は逮捕されるが、事件の核心には謎が残されていた。妻が殺害前に購入した置時計の意図が不明だったのだ。
湯川が柳沢の投球フォームを科学的に分析する中で、事件の隠された真相が明らかになる。亡き妻が柳沢に伝えたかった想いとは何だったのか。
第5章:念波る(おくる)
アンティークショップ経営者の磯谷若菜が自宅で襲われ意識不明の重体となる。その直後、若菜の双子の妹・春菜は「姉が襲われた」と感じていた。
春菜の証言に興味を持った湯川は、双子間のテレパシー現象を科学的に解明しつつ、事件の真相に迫る。
第6章:偽装う(よそおう)
湯川と草薙が結婚式に出席するため訪れた地方で、有名作曲家夫婦が殺害される事件が発生。悪天候による土砂崩れで警察が現場に来られないため、草薙が初動捜査に協力する。
湯川は現場の状況から犯人が現場を偽装していることに気付き、その目的と真相を解き明かしていく。
第7章:演技る(えんじる)
劇団「青狐」の演出家・駒井良介が自宅で殺害される。駒井の元恋人である神原敦子がアリバイを主張するが、すぐに偽装だと判明。
敦子のアリバイ偽装の裏に隠された真実とは何か。湯川は凶器が現場にないことに着目し、事件の謎を解く。
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