東野圭吾 著 『虚ろな十字架』って どんな本?

東野圭吾『虚ろな十字架』 小説

『虚ろな十字架』(うつろなじゅうじか)は、東野圭吾による書き下ろし長編サスペンス小説で、2014年5月25日に光文社から単行本が刊行されました。本作は、娘を強盗に殺された主人公と、その事件がきっかけで離婚した元妻の人生が絡み合いながら、死刑制度をテーマに描かれた重厚な物語です。刊行直後に話題を呼び、2014年6月2日付オリコンチャートのBOOK総合部門で1位を獲得。また、文庫部門で1位を獲得した『パラドックス13』と合わせ、5年7か月ぶりとなるオリコンランキングの2部門制覇を成し遂げました。2017年5月11日には光文社文庫版も発売されています。

本作では、被害者家族の苦悩や、犯罪者とその家族が背負う十字架、さらには死刑廃止論や社会の矛盾が浮き彫りにされており、東野圭吾の社会派ミステリーとしての新たな一面が際立っています。

東野圭吾『虚ろな十字架』

『虚ろな十字架』

(光文社文庫)

2014年 5月 発売

11年前、中原道正は、最愛の娘・愛美を強盗に殺害されました。その悲劇により妻・小夜子との関係は破綻し、二人は離婚。その後、道正はペット葬儀社で働き、小さな命を供養することで自分の心を癒やしながら生活を送っていました。そんな道正のもとに、かつて愛美殺害事件の担当刑事だった佐山が訪れます。彼の口から知らされたのは、離婚した元妻・小夜子が刺殺されたという衝撃的なニュースでした。

小夜子の殺害事件は、犯人の町村作造が自首したことで早期に解決したように見えました。しかし、町村が犯行に至った理由について警察の捜査は進展せず、事件は単なる無差別殺人として扱われることになります。町村には娘・花恵がおり、彼女は小児科医の仁科史也と結婚していました。しかし、義母である仁科妙子は、花恵に対して不信感を抱き、彼女との離婚を史也に迫ります。一方、道正は事件の真相を追う中で、小夜子が生前に行っていた活動を知ります。小夜子は娘を失った悲しみを乗り越えるため、死刑廃止反対の運動に関わっていました。

さらに、調査を進めるうちに小夜子が殺害される三日前に、仁科史也が勤務する病院を訪れていたことが判明。浜岡小夜子と町村作造の間に何の接点もないと思われていたこの事件は、一転して新たな謎を呼び起こします。道正は元妻の足跡をたどりながら、この事件の裏に潜む恐ろしい事実にたどり着くことになります。

「娘を殺した犯人が死刑になれば救われるのか?」という問いに道正と小夜子が向き合い、それぞれが選んだ異なる道。真相が明かされたとき、そこには親子や夫婦の絆、そして深い哀しみが浮かび上がります。娘を失った父親、妻を失った夫、そして犯罪者の家族たちが背負う「十字架」とは何なのか。東野圭吾が放つ衝撃のサスペンスがここにあります。

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