東野圭吾 著 『美しき凶器』って どんな本?

東野圭吾『美しき凶器』 小説

東野圭吾は日本を代表するミステリー作家であり、その著作にはスポーツやアスリートを題材とした作品が多く存在します。『美しき凶器』もその一つで、スポーツ界で活躍したトップアスリートたちを中心に据えたサスペンス小説です。

アスリートの鍛え抜かれた身体は、人間の持つ可能性を最大限に引き出した芸術のようなもの。その美しさと力強さに私たちは心を奪われます。今作では、そんなアスリートの身体能力が物語の核となり、怪物的な身体に改造された一人の女性が主人を殺した人々に復讐を仕掛けていくストーリーが展開されます。

物語は、かつて世界的に名を馳せた4人のアスリートたちが隠してきた「ドーピング」という暗い秘密から始まります。彼らの平穏な生活は、かつての仲間の自殺をきっかけに崩れ去り、秘密を守るためにある計画を実行するものの、やがてタランチュラと呼ばれる異形の復讐者によって命を狙われることになります。

タランチュラは、恐るべき力を持つ殺人者である一方、その行動には赤子のような無垢さとひたむきさが感じられます。その純粋さゆえに、復讐という冷酷な目的の中にもどこか美しさを感じさせ、読者を魅了します。また、主人公たちが繰り広げる命を懸けた逃走劇の緊張感や、複雑に絡み合う人間関係も見どころの一つです。

さらに物語には意外な仕掛けが用意されており、クライマックスで明かされる驚きの真実が読者を唸らせます。この予想を裏切る展開に、多くの読者が「騙された!」という感想を抱くことでしょう。

復讐者と逃亡者、それぞれの視点から描かれる人間ドラマ。あなたはどの登場人物に感情移入しながら読み進めるでしょうか?一気読み必至のスリリングな展開をぜひ堪能してください。

東野圭吾『美しき凶器』

『美しき凶器』

(光文社文庫)

1992年 1月 発売

かつて世界的に名を馳せたスポーツ選手、安生拓馬、丹羽潤也、日浦有介、佐倉翔子。彼らには共通の「知られてはならない秘密」があった。それは、自身の栄光がドーピングによって得られたものだったという事実だ。現在はスポーツ界を引退し、それぞれがその名声を活かして新たな人生を歩んでいたが、突如として彼らの平穏な生活が揺さぶられる。

きっかけは、同じくドーピングによって活躍していた元アスリート、小笠原の自殺だった。小笠原の死因がドーピングの後遺症だと判明し、さらなる追及が及ぶことを恐れた4人は、過去の秘密を完全に消し去るべく行動を開始する。彼らの秘密を握る唯一の人物、仙道之則医師が保有するデータを消去するため、仙道の別荘に忍び込んだ。しかし、不在だと思っていた仙道と鉢合わせし、緊迫した状況の中、佐倉翔子が誤って仙道を射殺してしまう。

4人は仙道の死体とデータを隠滅するため、別荘に火を放ち逃走する。だが、その様子を目撃していた者がいた。タランチュラと呼ばれるその女は、仙道によって育成されたスポーツ界のモンスターともいえる存在であり、彼の死を目の当たりにして復讐を誓う。冷酷かつ緻密な計画を練る彼女は、警官を殺害して武器を手に入れ、4人の元へと迫っていく。

追われる身となった安生たちは、身の安全を確保するため、逆に彼女を返り討ちにすることを画策する。しかし、圧倒的な身体能力と狡猾さを持つタランチュラは、一人、また一人と彼らを追い詰めていく。果たして彼らは、この復讐の連鎖から逃れることができるのか?それとも彼女の冷酷な罠に屈するのか?

絶望と緊迫感が渦巻く逃走劇と、復讐の物語が絡み合う中、東野圭吾が描き出す人間の本性と欲望の交錯。罪と秘密が導く結末とは…。

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