東野圭吾 著 『天空の蜂』って どんな本?

東野圭吾『天空の蜂』 小説

『天空の蜂』は、東野圭吾による長編クライシスサスペンス小説。1995年11月7日に講談社から単行本として初めて刊行され、1997年には講談社ノベルス版が発行されました。本作は第17回吉川英治文学新人賞の候補作に選ばれ、1998年には受賞者である真保裕一による解説が収録された文庫版が発売されました。2015年には単行本の新装版が刊行され、同年、堤幸彦監督によって映画化されました。

物語は最新鋭の超大型特殊ヘリ「ビッグB」の無人操縦によるハイジャックから始まります。ヘリは核燃料開発事業団の高速増殖原型炉「新陽」の上空でホバリングを続け、犯人からは原発停止を要求する脅迫文が各所に送られます。原子力発電に対する問題提起と、緊迫感あふれる展開が織りなす傑作サスペンスとして多くの読者を魅了しました。

社会問題を背景にしたストーリーと圧倒的なスリルが特徴の『天空の蜂』は、東野圭吾の代表的な作品の一つとして知られています。

東野圭吾『天空の蜂』

『天空の蜂』

(講談社文庫)

1995年 11月 発売

夏のある日、航空機開発に携わる湯原は、妻と息子・高彦を連れて錦重工業小牧工場を訪れていた。同僚の山下も家族とともに参加し、最新鋭の超大型特殊ヘリコプター「ビッグB」の領収飛行を見学する予定だった。ビッグBは海上自衛隊向けの掃海ヘリで、試験飛行を控えた期待の新鋭機。しかし、湯原たちの予想を超えた出来事が起こる。湯原と山下の息子たちが格納庫に忍び込み、無人のビッグBの中に入り込んだのだ。

その直後、第三格納庫の扉が突然開き、無人操縦となったビッグBが飛び立ってしまう。山下の息子・恵太は脱出できたものの、高彦はそのまま機内に取り残された。ビッグBは無人飛行を続け、福井県にある原子炉・高速増殖原型炉「新陽」の上空に到達。そこでホバリングを開始し、周囲を緊迫させる。間もなく、防衛庁や福井県警、各原子力施設など15カ所に謎の脅迫文が届く。送り主は「天空の蜂」を名乗るテロリストだった。

脅迫文にはこう書かれていた。「新陽以外のすべての原子力発電所を使用不能にし、建設中の原発も全て中止せよ。要求をテレビ中継しなければ、ビッグBを新陽に墜落させる」。さらに、ヘリは大量の爆薬を積載しており、墜落すれば原発は甚大な被害を受けるという。

政府はこの脅迫に対応すべく緊急会議を開き、専門家や軍事関係者が対応策を検討する。しかし犯人の目的は単なる破壊ではなかった。「原子力発電安全神話」を覆し、日本中の原発開発を中止に追い込むこと――それがテロの真の狙いであると判明する。湯原と山下は子供たちを救うため奔走し、政府と警察も、ビッグBの制御を取り戻そうと必死の作業を続ける。

刻々と迫るタイムリミット。燃料が尽きればビッグBは墜落する。果たして、政府はテロリストの要求に屈するのか、それともビッグBを安全な場所へと導き、高彦を救い出すことができるのか?究極の危機が繰り広げられる中で、予想もしなかった真実が次第に浮かび上がっていく――。

『天空の蜂』は、圧倒的な緊張感と社会への鋭い問題提起を融合させた、東野圭吾の傑作サスペンスです。

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