「法人」と聞くと、株式会社や合同会社などの“会社”を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし、法律上の「法人」は会社だけではなく、その中にはさまざまな種類が存在します。
法人は大きく分けると、国や地方公共団体が設立する「公法人」 と、
民間の人や団体が設立する「私法人」の2つに分類されます。
本記事で解説する「私法人」とは、国や自治体ではなく、個人や民間団体が主体となって設立する法人の総称です。
営利を目的とする会社法人だけでなく、NPO法人や一般社団法人、学校法人などの非営利法人も、すべて私法人に含まれます。
「私法人=会社」だと思っていた方にとっては、少し意外かもしれません。
本記事では、私法人の基本的な意味から、公法人との違い、私法人に含まれる主な法人の種類までを、できるだけわかりやすく整理していきます。
法人の全体像を理解するための“整理役”として、ぜひ最後までご覧ください。
私法人とは?
● 私法人の基本的な定義
私法人(しほうじん)とは、国や地方公共団体ではなく、個人や民間の団体が設立する法人のことを指します。
法人というと「会社」を思い浮かべがちですが、法律上の私法人には、会社だけでなく、さまざまな形態が含まれています。
たとえば、
- 株式会社・合同会社などの 営利法人
- 一般社団法人・NPO法人・学校法人などの 非営利法人
これらはすべて、設立主体が民間であるため「私法人」に分類されます。
重要なのは、「私法人=営利法人」ではないという点です。
私法人という分類は、「利益を目的にしているかどうか」ではなく、誰が設立したのか(設立主体)によって決まります。
● 法律上の位置づけとしての私法人
私法人は、民法・会社法・各種特別法などに基づいて設立されます。
- 会社法 → 株式会社・合同会社など
- 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
- NPO法
- 学校教育法・医療法・社会福祉法 など
それぞれ根拠となる法律は異なりますが、「民間が設立する法人である」という点は共通しています。
このように私法人は、事業活動から社会貢献、教育・医療・福祉まで、非常に幅広い分野を担っているのが特徴です。
公法人との違いは何が違う?
私法人を理解するうえで欠かせないのが、公法人との違いです。
両者は「法人」という点では共通していますが、設立の考え方や役割には大きな違いがあります。
● 設立主体の違い
最も大きな違いは、誰が法人を設立するのかという点です。
- 公法人:国や地方公共団体が設立
- 私法人:個人や民間団体が設立
公法人は、行政サービスや公共性の高い業務を担うために設立されます。
一方、私法人は、民間の意思によって設立され、事業活動や公益活動など、目的は多岐にわたります。
● 目的・役割の違い
設立主体の違いは、そのまま法人の役割や目的にも表れます。
- 公法人
- 行政の一部を担う
- 公共サービスの提供が中心
- 国や自治体の政策と密接に関係する
- 私法人
- 事業活動や社会貢献活動を行う
- 利益追求型・非営利型の両方が存在
- 活動内容の自由度が高い
私法人は、社会のニーズに応じて柔軟に活動できる点が大きな特徴です。
● 公法人と私法人の違い【比較表】
| 項目 | 公法人 | 私法人 |
|---|---|---|
| 設立主体 | 国・地方公共団体 | 個人・民間団体 |
| 主な目的 | 公共サービス・行政補完 | 事業活動・公益活動など |
| 利益追求 | 原則なし | あり・なし両方存在 |
| 代表例 | 独立行政法人、地方独立行政法人 | 株式会社、NPO法人、学校法人 |
私法人にはどんな種類がある?
私法人は、設立主体が民間であるという共通点を持ちながら、目的や活動内容によってさまざまな種類に分かれています。
ここでは、大きな分類として「営利法人」と「非営利法人」に分けて整理します。
● 営利法人(利益を目的とする法人)
営利法人とは、事業活動によって利益を得ることを目的とする私法人です。
得られた利益は、出資者や株主に分配されることを前提としています。
代表的な営利法人には、次のようなものがあります。
- 株式会社
- 合同会社
- 合名会社
- 合資会社
これらはいずれも会社法に基づいて設立される法人で、一般的に「会社」と呼ばれるものは、この営利法人に含まれます。
起業やビジネスを行う場合、多くの人がまず検討するのがこの営利法人です。
● 非営利法人(利益分配を目的としない法人)
非営利法人は、利益を出してはいけない法人というわけではありません。
正しくは、利益を出しても、それを構成員に分配しない法人を指します。
代表的な非営利法人には、次のようなものがあります。
- 一般社団法人
- 一般財団法人
- NPO法人
- 学校法人
- 医療法人
- 社会福祉法人
- 宗教法人
これらの法人は、教育・医療・福祉・文化・地域活動など、社会的な役割を担うケースが多いのが特徴です。
● 営利・非営利にかかわらず「私法人」
ここで押さえておきたい重要なポイントは、営利法人・非営利法人のどちらも「私法人」であるという点です。
私法人かどうかを決める基準は、
- 利益を出すかどうかではなく、
- 誰が設立したのか(民間か、公か)
という点にあります。
この考え方を理解しておくと、「法人の種類が多くて混乱する」という状態を防ぐことができます。
「私法人=会社」ではない?
私法人について調べていると、
「私法人って、つまり会社のことですよね?」
と感じる方も多いかもしれません。
しかし、私法人と会社はイコールではありません。
● 会社は私法人の一部にすぎない
法律上の整理をすると、関係は次のようになります。
- 法人
- 公法人
- 私法人
- 会社(営利法人)
- 非営利法人
つまり、会社は私法人の中の一部であり、私法人のすべてが会社というわけではありません。
株式会社や合同会社は確かに身近ですが、学校法人や医療法人、NPO法人も同じ「私法人」に含まれます。
● よくある誤解を整理
私法人に関して、特に多い誤解を整理しておきましょう。
- ❌ 法人=会社
- ❌ 私法人=営利法人
- ❌ 非営利法人は利益を出してはいけない
実際には、
- ⭕ 法人には公法人と私法人がある
- ⭕ 私法人には営利法人と非営利法人がある
- ⭕ 非営利法人も収益活動は可能
という整理になります。
この違いを理解しておくことで、法人制度全体を正しく捉えられるようになります。
どんな人・団体が私法人を選ぶのか?
私法人は、営利・非営利を問わず幅広い目的に対応できるため、さまざまな人や団体に選ばれています。
ここでは、目的別に代表的なケースを見ていきます。
● 営利目的で事業を行いたい人・企業
次のようなケースでは、営利法人としての私法人が選ばれます。
- 起業してビジネスを始めたい
- 商品やサービスを提供して利益を上げたい
- 事業拡大や資金調達を視野に入れている
この場合、株式会社や合同会社などの会社形態が一般的です。
事業内容や将来の展望によって、最適な会社形態を選択することが重要になります。
● 社会貢献・公益活動を行いたい団体
次のような目的の場合は、非営利法人としての私法人が選ばれることが多くなります。
- 地域活動やボランティア活動を継続的に行いたい
- 教育・福祉・医療・文化活動に取り組みたい
- 寄付や助成金を活用しながら活動したい
このような場合、一般社団法人やNPO法人、学校法人、社会福祉法人などが選択肢になります。
● 目的に応じて法人形態を選ぶことが大切
私法人には多くの種類があるため、「どの法人が正解か」ではなく、「目的に合っているか」が重要です。
- 利益を分配したいのか
- 公益性を重視したいのか
- どの程度の自由度や信用力が必要か
こうした視点で整理すると、自分や団体に合った私法人の形が見えてきます。
まとめ
私法人とは、国や地方公共団体ではなく、個人や民間団体が設立する法人の総称です。
株式会社や合同会社といった会社法人だけでなく、一般社団法人やNPO法人、学校法人などの非営利法人も、すべて私法人に含まれます。
私法人かどうかを判断する基準は、「利益を出すかどうか」ではなく「誰が設立したのか」という点です。
この考え方を押さえておくと、法人制度全体を整理しやすくなります。
これから法人を設立したい人や、法人の仕組みを学びたい人は、まず「自分は何を目的に法人を作りたいのか」を明確にすることが大切です。
目的に合った法人形態を選ぶことで、無理のない運営と継続的な活動につながります。
私法人の全体像を理解したうえで、気になる法人形態については、個別記事でさらに詳しく確認してみてください。



コメント