『聖女の救済』とは
『聖女の救済』は、東野圭吾による推理小説で、ガリレオシリーズ第5弾にあたる長編作品です。2006年から『オール讀物』に連載され、2008年に単行本として刊行されました。後に文庫化され、2013年にはテレビドラマ『ガリレオ』の最終章として「前後編」で映像化されました。
物語は、資産家でIT企業の社長である真柴義孝が自宅で毒殺される事件から始まります。死因はコーヒーに混入された亜ヒ酸と判明しますが、毒の混入方法は特定されず、義孝と離婚問題で揉めていた妻・綾音には鉄壁のアリバイがありました。事件の捜査を担当する草薙刑事は、美貌の綾音に惹かれますが、彼女の無実を確信していました。しかし、後輩の内海刑事は綾音を疑い、独断で物理学者の湯川学(通称ガリレオ)に協力を依頼します。湯川は当初捜査協力に消極的でしたが、事件の不可解さと草薙の感情に興味を持ち、捜査に乗り出すことになります。
本作では、ガリレオ史上最も大胆かつ緻密なトリックを駆使した完全犯罪が描かれています。湯川が導き出した「虚数解」と呼ばれる答えとは何か、そして、綾音が抱える深い闇とは――東野圭吾ならではの緻密な伏線と心理描写が光る傑作ミステリーです。
『聖女の救済』の あらすじ
IT企業の社長である真柴義孝は、美貌の妻・綾音と結婚して1年が経っていました。しかし、義孝は子供を欲しており、綾音に子供ができないことを理由に離婚を決意します。綾音は義孝の突然の離婚話に動揺しながらも、冷静に対応し、自ら北海道の実家に帰省します。ところが、綾音の帰省中に義孝が自宅で毒殺されるという衝撃的な事件が発生します。
義孝の死因は、コーヒーに混入された亜ヒ酸によるものでした。捜査を担当した警視庁捜査一課の草薙刑事と内海刑事は、まず動機のある人物として綾音に疑いを向けます。しかし、綾音には犯行当日、遠く離れた北海道に滞在していたという完璧なアリバイがありました。また、亜ヒ酸の混入経路も特定できず、捜査は難航します。草薙は綾音の無実を信じる一方で、内海は綾音を疑い続け、2人の意見は対立します。
内海は真相を明らかにするため、かつて数々の難事件を解決した物理学者・湯川学(ガリレオ)に捜査協力を依頼します。湯川は当初事件への関与をためらいますが、綾音に対する草薙の感情や事件の不可解さに興味を抱き、捜査に参加します。調査を進める中で、湯川は綾音の計画したトリックの存在に気付きます。それは科学的に可能でありながら、現実的には実行不可能に思えるものでした。湯川はこのトリックを「虚数解」と表現します。
湯川は緻密な検証を重ね、ついに綾音が夫を毒殺した完全犯罪の全貌を解き明かします。しかし、その裏には綾音の深い愛情と悲しみ、そして彼女が「救済」を果たすために選んだ究極の決断が隠されていました。湯川と草薙、内海が直面するこの事件の結末は、読者に驚きと深い感動を与えるものとなっています。
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