東野圭吾 著 『人魚の眠る家』って どんな本?

東野圭吾『人魚の眠る家』 小説

『人魚の眠る家』(にんぎょのねむるいえ)は、東野圭吾による長編ヒューマンミステリー小説で、2018年に映画化されました。本作は、東野圭吾デビュー30周年記念作品として執筆され、親子愛、倫理観、そして生と死の境界線に迫る物語です。

物語は、離婚を決意した夫婦が娘の小学校受験を終えるまでの「仮面夫婦」としての日々を過ごす中、突然の悲劇によって一変します。プール事故で脳死状態に陥った娘の瑞穂を前に、両親は究極の選択を迫られることに。医師から臓器提供を提案され、一度は受け入れたものの、娘がかすかに動いたことで母親の薫子は決断を覆し、最先端技術を駆使して瑞穂の生命を「繋ぎ止める」道を選びます。この選択が家族に何をもたらすのか。

愛と狂気の狭間で揺れる家族の絆を描きつつ、生命の尊厳や人間のエゴについて読者に深い問いを投げかける物語です。

東野圭吾『人魚の眠る家』

『人魚の眠る家』

(幻冬舎文庫)

2015年 11月 発売

播磨和昌と妻・薫子は、和昌の浮気が原因で離婚を決意していました。しかし、娘・瑞穂の小学校受験を控えているため、受験が終わるまでは「円満な夫婦」を演じることを余儀なくされていました。面接試験の予行演習が行われる日、夫婦に突然の悲報が届きます。瑞穂がプールで溺れ、病院に運ばれたという知らせでした。

病院に駆けつけた和昌と薫子に医師が告げたのは、瑞穂が脳死状態であるという残酷な現実でした。医師から臓器提供の選択を迫られ、娘の他者を思いやる優しさを知る両親は一度は臓器提供を決断します。しかし、臓器移植コーディネーターを待つ病室で薫子は瑞穂の指がわずかに動くのを目撃します。その瞬間、薫子は娘の死を受け入れることを拒み、臓器提供を取りやめる決断を下しました。

和昌が経営するハリマテクス社の協力で、瑞穂には最先端の人工知能呼吸コントロールシステムが導入され、筋肉に電気信号を流して手足を動かせる技術も適用されました。瑞穂の身体は次第に健康を取り戻し、見た目には眠っている普通の少女のようになっていきます。しかし、彼女が動くことに嫌悪感を抱く人々もおり、弟の生人も偏見の目にさらされることになります。

薫子は娘のためにすべてを捧げますが、和昌や周囲の人々は、瑞穂の「生」を受け入れることに苦しみ続けます。そして瑞穂の体調が急激に悪化する中、家族は再び困難な決断を迫られることになるのです。

「生命の尊厳とは何か」「母の愛とはどこまで純粋であるべきか」という重い問いを投げかける物語が、静かに、そして衝撃的に幕を下ろします。

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