『夢幻花』とは
『夢幻花』(むげんばな)は、東野圭吾による推理小説であり、2013年度の柴田錬三郎賞を受賞した作品です。2002年から2004年にかけて、PHP研究所の月刊誌『歴史街道』に連載された後、2013年に単行本として刊行されました。本作の出版にあたっては、連載時から長い年月が経過したため、科学情報を更新し、物語には2011年の東日本大震災の影響も織り交ぜられています。2016年にはPHP文芸文庫版も発売され、多くの読者に親しまれています。
物語の中心には、花を愛してやまなかった老人・秋山周治の不可解な殺害事件があります。この事件をきっかけに、孫娘の梨乃と大学院生の蒲生蒼太が真相解明に乗り出し、「黄色いアサガオ」という幻の花を巡る謎や50年前の通り魔事件「MM事件」が徐々に明らかになっていきます。家族の愛情や過去の因縁が交錯し、ミステリー要素と人間ドラマが絶妙に融合した一作です。
『夢幻花』の あらすじ
花を愛し、余生を静かに過ごしていた秋山周治が何者かに殺害される事件が起こる。孫娘の秋山梨乃が祖父の遺体を発見し、悲しみに暮れる中、祖父の庭から一鉢の黄色い花が消えていることに気づく。梨乃はその花の写真をブログに掲載するが、謎の人物・蒲生要介から連絡が入り、「その花には関わるな」と警告を受ける。疑念を抱いた梨乃は要介に再び会おうとするが、そこで弟の蒼太と出会い、共に真相解明に向けて動き出す。
やがて、消えた黄色い花が江戸時代に絶滅したとされる「黄色いアサガオ」であることが判明し、祖父の殺害がその花に関係している可能性が浮上する。一方、西荻窪署の早瀬刑事もまた、事件の捜査を進める中で「黄色いアサガオ」にたどり着き、50年前に発生した通り魔事件「MM事件」との関連を見出す。早瀬刑事は息子を助けてくれた正義感の強い周治の死に衝撃を受け、執念を持って捜査を続ける。
事件の真相を追ううちに、梨乃と蒼太は過去の因縁や家族の隠された秘密に直面し、「夢幻花」と呼ばれる花にまつわる壮絶なドラマが明らかになっていく。幻の花と祖父の死、そして50年前の事件が繋がる時、梨乃は家族と向き合い、自らの夢を見つめ直すこととなる。
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