宝冠章という名前を見ても、どのような勲章なのか、すぐに思い浮かぶ方は多くないかもしれません。
旭日章や瑞宝章に比べると耳にする機会が少なく、今はどのような場面で授与される章なのかも分かりにくい勲章のひとつです。
ただ、宝冠章は単に知名度が低いだけの章ではありません。
明治時代に制定された正式な勲章であり、歴史の中では女性に対する勲章として独自の位置づけを持ってきました。
そして現在は、一般的な国内叙勲とは少し異なるかたちで運用されている章でもあります。
そのため、宝冠章を理解するときは、今どのように使われているのかという現在の姿だけでなく、
もともとどのような役割を持っていたのかという歴史的な背景もあわせて見ることが大切です。
この二つを分けて考えると、宝冠章の性格はかなりつかみやすくなります。
この記事では、宝冠章の基本的な位置づけ、現在どのような場面で授与されるのか、歴史的にはどのような勲章だったのか、種類ごとの構成、実際の授与例まで整理しながら、宝冠章をどう理解すると分かりやすいのかを丁寧に見ていきます。
宝冠章とは何か

宝冠大綬章・副章(右下)・略綬(左下)
(ほうかんだいじゅしょう)

宝冠牡丹章・略綬(左)
(ほうかんぼたんしょう)

宝冠白蝶章・略綬(左)
(ほうかんしろちょうしょう)

宝冠藤花章・略綬(左)
(ほうかんとうかしょう)

宝冠杏葉章・略綬(左)
(ほうかんきょうようしょう)

宝冠波光章・略綬(左)
(ほうかんはこうしょう)
宝冠章は、明治21年に制定された勲章です。
日本の勲章制度の中では、瑞宝章と同じ年に整えられた章のひとつで、制度の上でも正式な勲章として位置づけられています。
勲章の種類の一覧でも、大勲位菊花章、桐花大綬章、旭日章、瑞宝章、文化勲章などと並んで挙げられており、例外的な制度外の章ではありません。
ただ、宝冠章を理解するときには、現在の運用を踏まえて見る必要があります。
宝冠章は昔から存在する歴史ある勲章ですが、今の制度の中では、旭日章や瑞宝章のように広く一般に運用される章とは少し性格が異なります。
そのため、単に「昔からある勲章の一つ」とだけ見ると、現在の位置づけが少し見えにくくなります。
また、宝冠章には意匠の面でも独自性があります。
内閣府の説明では、宝冠章のデザインは、古代の女帝の冠を模した宝冠を中心に、真珠や竹枝、桜の花葉などを配したものとされています。
この意匠からも、宝冠章がほかの勲章とは少し異なる個性を持つ章であることがうかがえます。
ここで、基本情報を簡単に整理すると次のようになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 宝冠章 |
| 制定 | 明治21年 |
| 位置づけ | 制度上は正式な勲章の一つ |
| 現在の特徴 | 一般的な国内叙勲とは少し異なる運用がされている |
| ポイント | 現在の運用と歴史的な背景の両方を見ると理解しやすい |
このように、宝冠章は勲章制度の中にきちんと位置づけられた正式な章です。
その一方で、現在の使われ方は少し特殊で、そこに宝冠章の分かりにくさがあります。
まずは、歴史ある正式な勲章でありながら、今は一般的な勲章とは少し違う運用がされている章と押さえておくと、全体像がつかみやすくなります。
宝冠章は、現在どのような場面で授与されるのか
宝冠章を理解するときに、まず押さえておきたいのは、
現在は一般的な国内叙勲の中で広く授与される章ではない
ということです。
この点が、旭日章や瑞宝章との大きな違いです。
現在の宝冠章について、内閣府では、
「外国人に対する儀礼叙勲等特別な場合に、女性にのみ授与される」
と整理されています。
つまり、今の宝冠章は、国内の幅広い功労者を対象に定期的に授与する章というより、外交儀礼などを含む限られた場面で用いられる章として運用されています。
ここで注意したいのは、宝冠章を単純に「女性向けの勲章」と理解しないことです。
たしかに現在は女性にのみ授与される章ですが、そのことだけを取り出すと、今の運用の実態が見えにくくなります。
大事なのは、女性に対して、しかも外国人への儀礼叙勲等の特別な場合に限って用いられるという点です。
この限定のされ方まで含めて見ると、宝冠章の現在の位置づけがつかみやすくなります。
つまり、現在の宝冠章は、旭日章や瑞宝章のように春秋叙勲で広く受章者が出る章とは性格が異なります。
「女性にも広く授与される一般勲章」というより、
外交や国際儀礼の場面で、特別に用いられる章
として見たほうが、今の制度の姿に近いといえます。
このように見ると、宝冠章の現在の運用はかなり限定的です。
そのため、宝冠章を今の姿だけで見ると、
「なぜこの章が存在しているのか」「もともとどのような役割を持っていたのか」
が分かりにくくなります。
そこで次章では、宝冠章が歴史的にはどのような勲章だったのかを整理していきます。
宝冠章は、歴史的にはどのような勲章だったのか
宝冠章は、現在の運用だけを見ると、かなり特殊な勲章に見えます。
ただ、この章の性格をつかむには、もともとどのような役割を持っていたのかを見ておくことが欠かせません。
宝冠章は、明治21年に婦人に対する勲章として制定されました。
つまり、現在のように「外国人女性への儀礼叙勲等に限られる章」として始まったわけではなく、制度がつくられた当初には、女性に対する正式な勲章として位置づけられていたということです。
さらに、制度見直し前の宝冠章は、旭日章と対応関係を持つ章として理解されることもありました。
前記事でも整理されていたように、かつての宝冠章は、女性に対する勲章体系の中で一定の位置を持っており、現在のような限定的な運用だけで捉えると、その背景が見えにくくなります。
ここで大切なのは、宝冠章は昔からずっと今と同じ役割だったわけではないということです。
現在は、外国人に対する儀礼叙勲等の特別な場合に女性にのみ授与される章ですが、歴史的には、女性に対する正式な勲章として、もっと広い意味を持っていました。
この変化を押さえておくと、宝冠章がなぜ今も制度の中に残っているのかも見えやすくなります。
つまり、宝冠章は
- 歴史的には 女性に対する正式な勲章として設けられた章
- 現在は 外国人女性への儀礼叙勲等に限定して用いられる章
という二つの姿を持っています。
この両方をあわせて見ると、宝冠章は単に「今はあまり使われない章」ではなく、
制度の変化の中で役割を変えながら残ってきた勲章だと理解しやすくなります。
宝冠章が分かりにくく感じられるのは、まさにこの点にあります。
現在の姿だけを見ると限定的な章に見えますが、歴史をたどると、もともとはもっと広い制度上の意味を持っていたことが分かります。
そのため、宝冠章は「今どう使われているか」だけでなく、「かつて何のために設けられたのか」もあわせて見ると、全体像がかなりつかみやすくなります。
宝冠章は、いつ授与されるのか
宝冠章については、旭日章や瑞宝章のように、春秋叙勲の中で広く授与される章として考えると少し実態とずれてきます。
現在の宝冠章は、外国人に対する儀礼叙勲等、特別な場合に女性にのみ授与される章とされており、国内叙勲の中心的な流れの中で定期的に幅広く授与される章ではありません。
そのため、宝冠章は「毎年いつ授与されるのか」を日付中心で覚える章というより、どのような文脈で授与されるのかを押さえたほうが分かりやすい章です。
現在の運用では、外交儀礼や国際的な場面に関わる特別な叙勲として用いられるため、旭日章や瑞宝章のような春秋叙勲の感覚で受け止めると、宝冠章の性格は見えにくくなります。
ここで整理すると、現在の宝冠章の授与時期は、次のように考えるとつかみやすくなります。
- 一般的な国内叙勲のように、春秋叙勲の中で広く授与される章ではない
- 外国人への儀礼叙勲等、特別な場面で授与される章である
- そのため、授与の時期よりも、授与される場面や相手を見るほうが実態に近い
このように考えると、宝冠章は「授与日で整理する章」というより、
外交や国際儀礼の中で、必要に応じて用いられる章として理解したほうが自然です。
実際にどのような人物に授与されているかを見ると、この点はさらに分かりやすくなります。
宝冠章にはどのような種類があるのか

宝冠大綬章・副章(右下)・略綬(左下)
(ほうかんだいじゅしょう)

宝冠牡丹章・略綬(左)
(ほうかんぼたんしょう)

宝冠白蝶章・略綬(左)
(ほうかんしろちょうしょう)

宝冠藤花章・略綬(左)
(ほうかんとうかしょう)

宝冠杏葉章・略綬(左)
(ほうかんきょうようしょう)

宝冠波光章・略綬(左)
(ほうかんはこうしょう)
宝冠章は、一つの章名でありながら、その中に6種類があります。
現在の宝冠章は、次の6種類で構成されています。
| 種類 | 読み方 |
|---|---|
| 宝冠大綬章 | ほうかんだいじゅしょう |
| 宝冠牡丹章 | ほうかんぼたんしょう |
| 宝冠白蝶章 | ほうかんしろちょうしょう |
| 宝冠藤花章 | ほうかんとうかしょう |
| 宝冠杏葉章 | ほうかんきょうようしょう |
| 宝冠波光章 | ほうかんはこうしょう |
ここで押さえておきたいのは、これらがまったく別々の勲章ではないということです。
6種類は、それぞれ無関係に並んでいるのではなく、同じ宝冠章という枠組みの中で分かれている区分として理解するのが自然です。
また、宝冠章の種類名には、ほかの勲章とは少し違った特徴があります。
旭日章や瑞宝章は「大綬章」「重光章」「中綬章」など比較的共通性のある名称で構成されていますが、
宝冠章には牡丹・白蝶・藤花・杏葉・波光といった独自の名称が使われています。
この点にも、宝冠章の特別な性格が表れています。
意匠の面でも、宝冠章は独自性の強い章です。
前章までで見たように、宝冠章そのものが古代の女帝の冠を模した意匠を持っており、その構成の中にも、植物や装飾を思わせる名前が並んでいます。
こうした特徴からも、宝冠章がほかの勲章とは少し異なる系統の章であることが感じられます。
もちろん、6種類があるからといって、現在それぞれが国内で広く運用されているわけではありません。
現在の宝冠章は、外国人への儀礼叙勲等、特別な場合に限って授与される章です。
そのため、6種類の存在は、今の運用の広さを示すというより、歴史ある勲章として独自の体系を持っていることを示していると見るほうが自然です。
こうして見ると、宝冠章の6種類は、単なる名称の違いではありません。
歴史的な制度の中で整えられてきた独自の構成を、現在まで受け継いでいるものとして理解すると、全体像がつかみやすくなります。
宝冠章が少し特別に見えるのは、今の限定的な運用だけでなく、この独自の体系にも理由があるといえるでしょう。
宝冠章の授与例にはどのようなものがあるのか
宝冠章の現在の位置づけは、実際の授与例を見るとつかみやすくなります。
現在の宝冠章は、外国人に対する儀礼叙勲等、特別な場合に女性にのみ授与される章とされていますが、実際の受章例を見ると、その説明がより具体的に見えてきます。
たとえば前記事では、2014年10月24日付で、オランダ王国のマキシマ王妃陛下に宝冠大綬章が授与されている例が紹介されていました。
このような授与例を見ると、宝冠章が現在、国内の一般的な叙勲というより、外交儀礼や国際的な関係の中で用いられる章として機能していることが分かります。
ここで大切なのは、宝冠章の授与例が、旭日章や瑞宝章のように国内の幅広い分野の功労者へ向けられているわけではないということです。
宝冠章の現在の授与例から見えてくるのは、国家間の儀礼や外交上の文脈の中で、特定の対象に用いられる章だという点です。
この違いを押さえておくと、宝冠章をほかの勲章と同じ感覚で見なくてよいことも分かりやすくなります。
また、実際の授与例は、宝冠章が今も制度の中で生きている章であることも示しています。
現在の国内叙勲の中心ではあまり見かけなくても、外交儀礼の場面では役割を持ち続けているということです。
つまり宝冠章は、「昔の制度の名残」とだけ見るより、今も特定の文脈で用いられている現役の勲章として見たほうが実態に近いといえます。
授与例から整理すると、宝冠章の現在の性格は次のように見えてきます。
- 国内の一般的な叙勲で広く授与される章ではない
- 外国人女性に対する儀礼叙勲等で用いられる
- 外交や国際儀礼の中で役割を持つ章である
このように、授与例を見ると、宝冠章は「女性向けの勲章」というだけでは足りず、現在は外交儀礼の中で特別に用いられる章として理解したほうが、その位置づけがはっきり見えてきます。
宝冠章の分かりにくさは、まさにここにあります。
歴史ある正式な勲章でありながら、今はごく限られた場面で用いられているため、授与例を通して見たほうが性格をつかみやすいのです。
宝冠章をどう理解するとよいか
ここまで見てきた内容をふまえると、宝冠章は、単に「女性のための勲章」と理解するだけでは性格がつかみにくい章です。
現在の運用だけを見ると、外国人女性に対する儀礼叙勲等に用いられる特別な章ですが、それだけで宝冠章の全体像を言い表すことはできません。
大切なのは、宝冠章を現在の姿と歴史的な背景の両方から見ることです。
歴史的には、宝冠章は婦人に対する正式な勲章として設けられた章でした。
それが制度の見直しを経て、現在では外国人女性への儀礼叙勲等に限って用いられる章へと役割を変えています。
この変化を押さえておくと、宝冠章がなぜ今も制度の中に残っているのかが見えやすくなります。
また、宝冠章は旭日章や瑞宝章のように、現在の国内叙勲の中で広く授与される章ではありません。
そのため、他の勲章と同じ感覚で「どんな功績を評価する章なのか」とだけ考えると、少し理解しにくくなります。
宝冠章は、今の制度の中では、外交儀礼や国際的な場面で特別に用いられる章として見るほうが自然です。
ニュースや資料の中で宝冠章という名前を見かけたときは、
「どのような人物に授与されたのか」
「それは国内の一般叙勲なのか、それとも外交儀礼の文脈なのか」
という点に目を向けると、この章の意味がつかみやすくなります。
そうすると、宝冠章は単に昔の女性向け勲章の名残ではなく、制度の変化の中で役割を変えながら今も残っている章として見えてきます。
宝冠章が少し分かりにくく感じられるのは、今の使われ方だけを見ても不十分で、昔の制度だけを見ても足りないからです。
だからこそ、「歴史的にはどのような章だったのか」と「現在はどのように使われているのか」をあわせて見ることが、宝冠章を理解するいちばん自然な方法だといえるでしょう。
まとめ
宝冠章は、名前だけを見ると少し遠い存在に感じられるかもしれません。
けれど、その現在の位置づけと歴史をあわせて見ていくと、この章は単に「あまり見かけない勲章」ではなく、制度の変化を映しながら今も残っている特別な章であることが見えてきます。
現在の宝冠章は、広く授与される国内叙勲というより、外交儀礼の中で静かに役割を持ち続けている章です。
一方で、その背景には、かつて女性に対する正式な勲章として置かれていた歴史があります。
この二つを重ねて見たとき、宝冠章は今の使われ方だけでは語りきれない章なのだと感じます。
勲章は、よく知られた章だけが制度のすべてではありません。
宝冠章のように、表に出る機会は多くなくても、時代の移り変わりの中で意味を変えながら受け継がれてきた章を見ると、日本の勲章制度そのものも少し立体的に見えてきます。
宝冠章という名前にふれたとき、珍しい章として通り過ぎるのではなく、その背景にある歴史や現在の役割にも目を向けてみると、この章の印象は少し違って見えてくるのではないでしょうか。




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