『分身』とは
『分身』は、東野圭吾による推理小説で、1993年に集英社から刊行され、1996年に文庫化された。2012年にはWOWOWでテレビドラマ化され、多くの視聴者に衝撃を与えた作品でもある。
物語は、函館生まれの18歳の女子大生・氏家鞠子を中心に展開する。鞠子の平穏だった日常は、母親の死を契機に一変。母は中学時代に一家心中を図り、その際に命を落としたが、鞠子は生き延びた。母の死をきっかけに自分の生い立ちへの疑問を抱き始めた鞠子は、東京で驚くべき事実に直面する。彼女に瓜二つの女性、小林双葉の存在を知るのだ。
一方、20歳の女子大生・双葉はアマチュアバンドのボーカルとして活動していたが、母親から強くテレビ出演を反対される。しかし母の反対を押し切って出演した直後、母親がひき逃げ事件で亡くなる。罪悪感に苛まれた双葉は、母の死の真相を探るべく北海道へ向かい、鞠子と運命的な出会いを果たす。
鞠子と双葉は、それぞれの家庭に隠された秘密を解明するため共に行動を開始。その過程で浮かび上がるのは、クローン技術という現代科学がもたらした衝撃の真実だった。自分たちの存在が問い直される中で、彼女たちは家族とは何か、人間のアイデンティティとは何かという根源的なテーマに向き合っていく。
家族の絆、科学の進歩が引き起こす倫理的問題、そして自己発見の物語が巧みに絡み合い、東野圭吾らしい緻密なプロットと人間心理への洞察が際立つ一作となっている。
『分身』の あらすじ
函館市生まれの氏家鞠子は18歳。母親の静恵が中学時代に一家心中を図り、自身だけが生き残った過去を持つ。母親は火災で命を落としたが、その背景に不穏な影が漂う。小学校高学年の頃から、鞠子は母親が自分に冷たく接していると感じていた。「本当に母は私を愛していたのだろうか?」その疑問を解き明かすため、大学生になった鞠子は東京へ向かう。そして、そこで自分と瓜二つの女性・小林双葉の存在を知ることになる。
一方、東京で暮らす20歳の大学生・小林双葉は、アマチュアバンドのボーカルとして活躍していた。だが、母親からはテレビ出演を厳しく反対される。不満を抱えながらも出演を強行した双葉。しかしその直後、彼女の母親がひき逃げ事故で命を落とすという悲劇が起こる。「母の死の原因は私のテレビ出演ではないか」――双葉はそう考え、真相を突き止めるため北海道へ旅立つ。
北海道で運命的に出会う鞠子と双葉。生い立ちも性格も全く異なる二人だが、驚くべきほどの容姿の類似性に衝撃を受ける。なぜ自分たちはこれほど似ているのか?出生の秘密を探る中で、二人はある衝撃の事実に直面する。それは現代医学の倫理を問う「禁断の領域」に関わるものだった。
やがて、真相が明らかになるにつれ、鞠子と双葉は自分たちの存在意義について苦悩する。彼女たちの運命を決定づけた過去とは何だったのか。そして、それを乗り越えた先に待つ未来とは――。東野圭吾が現代の医療と人間のアイデンティティをテーマに描く、切なくもスリリングなサスペンス長編。
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