『手紙』とは?
『手紙』は、東野圭吾による長編小説で、犯罪加害者の家族が背負う重荷を描いた感動作です。強盗殺人の罪で服役中の兄・剛志と、その弟・直貴の物語を通して、加害者家族に対する世間の偏見や差別、そして家族の絆の在り方を鋭く問いかけています。
2001年から2002年にかけて「毎日新聞」日曜版に連載され、2003年に単行本化。第129回直木賞候補にも選ばれました。2006年には映画化され、文庫版は1か月で100万部以上を売り上げる大ヒット作となりました。その後も舞台化やミュージカル化、テレビドラマ化など、多方面で注目を集めています。
本作は、犯罪者本人ではなく、その家族が社会から受ける冷たい視線や、犯人の弟として背負わざるを得ない苦悩に焦点を当てた異色のミステリー。犯罪が家族に与える影響や贖罪の意味を深く掘り下げ、読者に強い印象を与える一作です。
『手紙』の あらすじ
武島剛志と弟の直貴は、両親を失い二人で助け合いながら暮らしていた。剛志は直貴を大学に進学させるため、懸命に働いていたが、無理がたたり職を失ってしまう。追い詰められた剛志は、かつて引越しで訪れた資産家宅に強盗に入ることを決意する。しかし、予想外に家人と鉢合わせし、咄嗟にその人物を殺してしまう。剛志は強盗殺人犯として逮捕され、15年の服役を言い渡される。
突然一人になった直貴は、兄の罪により社会から「強盗殺人犯の弟」というレッテルを貼られる。獄中の兄から毎月届く手紙には、直貴の未来を願う言葉が綴られていたが、その手紙を受け取るたびに直貴は複雑な思いに駆られる。
直貴は兄の影響を隠しながら大学を卒業し、家電メーカーに就職。応援し続けてくれた女性・由美子と結婚し、娘を授かる。しかし、加害者家族という事実は彼の周囲にも知られるようになり、娘がいじめに遭うなど、家族にも苦しみが及ぶ。
直貴はついに兄に絶縁の手紙を送る決意をする。それは、家族を守るための苦渋の選択だった。
そして直貴は被害者遺族の元を訪れ、謝罪の意を伝える。遺族から見せられたのは、剛志から毎月送られてきた手紙の束。そこには剛志の深い後悔と贖罪の思いが綴られていた。やがて、直貴は自分を見つめ直し、加害者家族としてどう生きるべきかを模索し始めるのだった。
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