『プラチナデータ』とは
『プラチナデータ』は東野圭吾による近未来を舞台にした長編ミステリー小説。2006年12月から2010年4月まで幻冬舎の『パピルス』に連載され、2010年に単行本化。2012年には文庫版も刊行された。物語はDNA捜査が高度に発達した社会で展開され、犯罪防止と検挙率向上を目的とした「DNA捜査システム」を巡る陰謀と、その中で容疑者として追われる身となる天才科学者・神楽龍平の姿を描く。犯罪捜査における科学技術の光と影、そして「人間の心」という究極のテーマに迫る一作である。
タイトルにある「プラチナデータ」は東野圭吾の造語であり、物語の核心に関わる特別なデータを指している。本作は当初、映画化を前提として執筆されたものの、最終的に小説として独立して完成。しかし、その後映画化が実現し、2013年3月に公開され多くの注目を集めた。科学と倫理、真実と偽りが交錯するこの作品は、東野作品の中でも異色かつ魅力的な位置を占めている。
『プラチナデータ』の あらすじ
近未来の日本。犯罪防止を目的に、国民のDNAデータをもとに犯人を特定する「DNA捜査システム」が開発され、検挙率100%、冤罪率0%を掲げて実用化されていた。このシステムの導入により犯罪捜査は飛躍的に効率化し、数多くの事件が迅速に解決されてきた。しかし、その画期的なシステムにも捉えきれない、ある連続殺人事件が発生する。
事件は若い女性が次々と銃殺されるというもので、DNA解析の結果は「NF13(NOT FOUND 13)」、つまり登録された遺伝子と類似するものがないケースを示していた。この異例の事態に、警察庁特殊解析研究所の主任解析員であり、DNA捜査システムの運用責任者である神楽龍平が捜査に当たる。しかし、次のターゲットとして選ばれたのは、DNA捜査システムの開発者である蓼科兄妹だった。蓼科兄妹は厳重に保護されていたにもかかわらず、何者かによって殺害される。現場に残された毛髪を解析した結果、犯人として浮かび上がったのは、なんと神楽自身だった。
身に覚えのない容疑に追い詰められた神楽は、警察に追われる身となる。しかし、彼にはもう一つの人格「リュウ」が存在しており、自分自身の意識では記憶のない時間が存在していた。この「リュウ」の存在が事件にどのように関わっているのか、神楽は疑念を抱きながらも逃亡を続け、真相を突き止めようとする。
逃亡の中で神楽は「プラチナデータ」という特別な情報の存在を知る。それはDNA捜査システムの中でも特別な役割を持つものであり、システムそのものの根幹を揺るがす秘密が隠されていた。警察から逃れながら、神楽は自分が関与したとされる事件の背後にある巨大な陰謀に迫り、ついには科学の限界と人間の倫理に直面する。
警察庁捜査一課の浅間刑事との攻防や、DNA捜査の光と影、そして「人間の心」を巡る深遠なテーマが交錯する中、神楽は自分の無実を証明し、真犯人を突き止めることができるのか。そして「プラチナデータ」に隠された衝撃の真実とは何なのか。DNA技術の進歩とその代償が生む未来を描いた、東野圭吾による傑作ミステリーがここに展開される。
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