東野圭吾 著 『虹を操る少年』って どんな本?

東野圭吾『虹を操る少年』 小説

『虹を操る少年』は、東野圭吾が1994年に実業之日本社から発表した小説で、1997年に講談社文庫版として再刊行された。

この物語は、光と音を使った独自の表現方法「光楽(こうがく)」を生み出した天才少年・白河光瑠(みつる)を中心に展開される。光瑠の「光楽」は、現代社会の中で孤独や苦悩を抱える若者たちに強く響き、彼らを導く新たなコミュニケーション手段として急速に広がっていく。しかし、その影響力の大きさから、大人たちは「光楽」を危険視し、阻止しようと動き出す。

少年が放つ“光”に惹かれ集まる若者たちの葛藤と成長、そして新たな価値観を提示するこの物語は、東野圭吾の作品らしい社会派のテーマを内包しつつ、サスペンスやミステリの要素を織り交ぜた異色の長編小説である。

東野圭吾『虹を操る少年』

『虹を操る少年』

(講談社文庫)

1994年 8月 発売

幼い頃から天才的な知能を持ち、超人的な色彩感覚に優れていた少年、白河光瑠(みつる)。その卓越した才能は幼少期から際立ち、彼が描く絵や答える問題の正確さは教師すら驚愕させた。しかし、その異常とも言える才能は、次第に家族や周囲に疎外感を与え、光瑠自身も孤独を深めていく。

高校生となった光瑠は、夜な夜な家を抜け出し、廃墟となった音楽ホールや学校の屋上で「光楽(こうがく)」と呼ばれる独自のパフォーマンスを行うようになる。「光楽」とは、光と音を組み合わせてメッセージを“演奏”する新次元の表現方法であり、これを聴いた者は強烈な共感を覚える。この光楽に惹かれ、元暴走族の相馬功一、受験に悩む高校生の志野政史、家庭不和に苦しむ中学生の小塚輝美など、多様な背景を持つ若者たちが光瑠の元へと集まっていく。

光瑠は建設途中で放棄された市民会館を活動の拠点とし、多くの若者に「光楽」を通じてメッセージを発信する。しかし、急速に広がる光楽の影響力に危機感を抱いた大人たちが、次第に光瑠を排除しようと動き出す。教育団体や保護者たちは光楽を「危険な洗脳」と非難し、メディアも光瑠の活動を大きく取り上げるようになる。

そんな中、光瑠を支援する一部の人物が現れ、彼は光楽を商業的な場に進出させることを決意する。しかし、光楽の影響力はさらに増大し、それを阻止しようとする大人たちの妨害が激化。さらに、光楽に関わる若者たちに禁断症状ともいえる現象が見られるようになり、社会的な問題へと発展していく。

やがて、光瑠と若者たちの純粋な交流を狙うより大きな陰謀が浮かび上がる。彼らが発する光と音のメッセージは何を意味するのか?そして、光瑠の真の目的とは?新たなコミュニケーションの形をめぐり、若者と大人の対立、理想と現実が交錯する中、光瑠と仲間たちはそれぞれの未来を選択していくことになる。

東野圭吾が描く、人と人を繋ぐ新たな絆とその危険性を問いかける傑作長編ミステリ。光と音による“虹”が織りなす感動の物語が、現代社会に一石を投じる。

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