東野圭吾 著 『魔力の胎動』って どんな本? ラプラスの魔女 シリーズ 2作目!

東野圭吾『魔力の胎動』 小説

『魔力の胎動』は、東野圭吾による連作短編集で、「ラプラスの魔女」の世界観を共有するスピンオフ作品です。鍼灸師・工藤ナユタの視点を通して描かれる本作では、不調に悩むスポーツ選手や過去に囚われる父親、同性愛者への偏見に苦しむミュージシャンといった、多様な悩みを抱える人々が登場します。彼らの前に現れるのは、不思議な能力を持つ少女・羽原円華。物理現象を予測する力を駆使して問題を解決する彼女ですが、その行動にはある切実な理由が隠されています。

本作は全5章からなり、スキージャンパーや野球選手の再起を描く前半から、過去のトラウマに立ち向かう登場人物の内面に迫る後半へと進んでいきます。特に最終章は「ラプラスの魔女」へとつながるエピソードが展開され、シリーズ全体の深みを増しています。絶望の中に希望を見出す物語は、読者に共感と感動を与える一冊です。

東野圭吾『魔力の胎動』

『魔力の胎動』

(角川文庫)

2018年 3月 発売

本作は、悩める人々と彼らを救う不思議な少女の物語を描いた全5章の連作短編集です。

【第一章:あの風に向かって飛べ】
かつては名ジャンパーと称されたスキージャンパー・坂屋幸広は、長引く不調に苦しみ引退を決意。そんな彼の前に現れたのは、風の流れを読む特殊な力を持つ少女・羽原円華。不調の原因を見抜いた円華は、坂屋を再び表彰台に立たせるべく行動します。

【第二章:この手で魔球を】
プロ野球投手・石黒達也の必殺技であるナックルボール。しかし、それを捕球できるのは引退間近のキャッチャー・三浦勝夫だけ。後継者の山東を育てるも、彼は自信を失い崩れてしまいます。石黒たちの窮地に現れた円華は、魔球をキャッチする秘策を提案。プロ野球人生をかけた試みが始まります。

【第三章:その流れの行方は】
脳神経外科医の恩師・石部憲明の息子が水難事故で植物状態に。事故をきっかけに崩れた家族関係を知った工藤ナユタは、円華と共に真相を探ります。事故の瞬間、父が母を引き留めた判断の正しさを証明するため、円華が奔走します。

【第四章:どの道で迷っていようとも】
作曲家でピアニストの朝比奈一成は、パートナーの死により音楽を失います。円華は尾村勇の死の真相を追う一方、ナユタ自身も抱える問題に直面。ナユタの過去に隠された痛みと円華の真の目的が明かされます。

【第五章:魔力の胎動】
硫化水素中毒事故の調査依頼を受けた青江修介。彼は調査を進める中で、事故の裏に隠された悲しい偶然と、ある家族の深い愛情を知ります。「ラプラスの魔女」につながる事件の核心が描かれます。

不思議な力を持つ円華の真意とは何か。登場人物たちがそれぞれの問題に向き合う様子を通じて、人間の持つ希望と葛藤が温かく描かれる物語です。

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