『殺人現場は雲の上』とは
東野圭吾の推理小説『殺人現場は雲の上』は、1989年にJOY NOVELSから単行本として刊行され、1992年に光文社文庫版が発売されました。本作の舞台は、作者の姉がスチュワーデスをしていたことから設定され、後の「しのぶセンセシリーズ」と同様の理由で決定されたといいます。
物語は新日本航空のスチュワーデス、早瀬英子(エー子)と藤真美子(ビー子)の凸凹コンビが遭遇する、空と地上で巻き起こる奇妙な事件を描いた短編集。エー子とビー子の軽妙な掛け合いや、個性的なキャラクターたちが織り成すユーモアと緊張感が魅力の一冊です。スチュワーデスの視点から語られる独特の推理が、読者をミステリーの世界へと引き込みます。
『殺人現場は雲の上』の あらすじ
新日本航空のスチュワーデス、早瀬英子(通称エー子)と藤真美子(通称ビー子)は、見た目も性格も正反対ながら抜群のコンビネーションを誇る名コンビ。社内でも有名な彼女たちは、明るく活発なエー子と、少しおっちょこちょいなビー子の絶妙な掛け合いで多くの乗客や同僚に愛されている。そんな彼女たちが、日々のフライトや宿泊先で遭遇するのは、思わず首を傾げたくなるような奇妙で不可解な事件の数々だった。
「ステイの夜は殺人の夜」
フライト後に鹿児島のホテルへ宿泊したエー子とビー子。乗客だった本間とスナックで再会し、楽しい夜を過ごしていたが、翌朝、本間の妻がホテルの部屋で他殺体として発見される。本間にはエー子たちが証言する完璧なアリバイがあったものの、事件の謎は深まるばかりだった。
「忘れ物に御注意ください」
赤ちゃん連れの夫婦向けツアー「ベビー・ツアー」に搭乗したエー子とビー子。しかし、ツアー客が降りた後の機内に赤ん坊が一人取り残されていた。全員が自分の赤ちゃんを抱いていたはずの状況で、この赤ん坊はいったい誰の子なのか?小さな勘違いが招いた不思議な事件が明らかになる。
「お見合いシートのシンデレラ」
離着陸時にスチュワーデスが座る「お見合いシート」で、ビー子は魅力的な男性と向かい合うことに。フライト中の会話をきっかけにデートの約束をし、初デートでいきなりプロポーズされる。大富豪の男性の真意にビー子は戸惑うが、その言葉には思いもよらない秘密が隠されていた。
「旅は道連れミステリアス」
東京行きの便で顔見知りの和菓子屋「富屋」の主人・富田敬三が搭乗。しかし、到着後、富田はホテルの浴室で女性と共に死体で発見される。警察は痴情のもつれと判断するが、事件の裏には多額の保険金が絡んでいた。本当に殺人だったのか、それとも別の目的が?
「とても大事な落し物」
エー子が機内の化粧室で見つけたのは、一通の「遺書」。自殺を思い止まらせようと遺書の持ち主を探し出すエー子だったが、乗客の一人にたどり着いたところで意外な真実が明らかになる。
「マボロシの乗客」
空港の客室乗務員室にかかってきた脅迫電話。「飛行機に乗っていた女性を殺した」という犯人の言葉通り、駐車場では血のついたバッグが発見されるが、その持ち主がどこにも見当たらない。やがて、目撃証言により新たな展開を迎えるが、事態はさらに混迷を極める。
「狙われたエー子」
盛岡のホテルで殺人事件が発生し、エー子のかつての恋人・塚原が容疑者として浮上。さらにエー子は帰宅途中に何者かに車で轢かれそうになる。塚原が犯人なのか?真実を確かめるため、エー子は単身塚原と向き合うことを決意するが、そこにはさらなる危険が待ち受けていた。
華やかな空の世界を舞台に、次々と巻き起こる不思議な事件に立ち向かうエー子とビー子。彼女たちの軽妙なやり取りと巧みな推理が光る、笑いと緊張感が交錯する7編の短編ミステリー集。
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