『禁断の魔術』とは
『禁断の魔術』は東野圭吾によるガリレオシリーズ第8弾であり、2015年6月10日に文春文庫オリジナルとして発刊された長編小説です。この作品は、もともと2012年に刊行された短編集『禁断の魔術 ガリレオ8』に収録されていた短編「猛射つ」を大幅に改稿して長編化したものです。科学の力が人間の悪意に利用される危険性を描き出し、読者に科学の倫理について深く考えさせる一作です。
本作では、科学者である湯川学がかつての教え子が起こそうとしている恐るべき計画に気づき、それを阻止しようと奮闘する姿が描かれます。事件の鍵を握るのは「レールガン」という強力な実験装置であり、その開発と利用をめぐる人間関係や復讐劇がストーリーの核心にあります。作品のテーマは「科学が悪意を持つ人間の手に渡った時、どのような危険が生じるのか」というものであり、湯川の苦悩と決意が強く描かれています。
本作は、2022年9月17日にテレビドラマ『ガリレオ』のスペシャルドラマとして映像化され、多くの視聴者を魅了しました。ガリレオシリーズとしてのエンターテインメント性と、科学倫理に関する深い問いかけが絶妙に融合した、シリーズ屈指の傑作です。
『禁断の魔術』の あらすじ
フリーライターの長岡修が自宅で殺害される事件が発生しました。長岡は日本の最先端科学技術を集約する「スーパーテクノポリス計画」を推進する政治家、大賀仁策のスキャンダルを暴こうとしていました。このスキャンダルは、大賀が愛人である古芝秋穂を見殺しにしたというものであり、大賀の政治生命を脅かす内容でした。
一方、秋穂の弟である古芝伸吾は、湯川学の高校時代の後輩であり、物理研究会のメンバーでした。伸吾は姉を失った悲しみと怒りから、大賀への復讐を決意し、その手段として「レールガン」と呼ばれる実験装置を利用しようと計画していました。このレールガンは、電流と磁界を用いて遠方の標的を破壊する強力な装置であり、伸吾はこれを湯川と共に新入生の勧誘イベントで製作した経験がありました。
湯川は教え子である伸吾が復讐のためにレールガンを使用しようとしていることを知り、彼の計画を阻止するために動き始めます。しかし、湯川自身もまた大きな葛藤を抱え、自らの手で事態を収束させるために予想外の行動に出ます。その行動がどのような結末をもたらすのか、そして湯川が科学者として下す最終的な決断とは――。
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