東野圭吾　著　『片思い』って　どんな本？

『片思い』とは

『片想い』は、東野圭吾による長編サスペンス小説で、ジェンダーや性の多様性をテーマに描いた話題作です。2004年に文春文庫版が刊行され、2017年にはWOWOWでテレビドラマ化されました。

物語は、年に一度開かれる元帝都大学アメフト部のOB会から始まります。その13回目の集まりで、主人公の哲郎は、姿を消していた元マネージャーの美月と再会します。しかし、美月は女性から男性へと変わりつつあり、性同一性障害を抱えながら生きていることを告白します。さらに、美月は過去に殺人を犯したと打ち明け、物語は一気にミステリー色を帯びていきます。

本作には、美月をはじめとする多様なキャラクターが登場します。戸籍上の性別を交換した人物や、半陰陽の陸上選手、同性愛者、いわゆるオネエなど、性的マイノリティの苦悩や葛藤が描かれ、それぞれが抱える問題がリアルに語られます。物語を通じて、彼らが直面する社会の偏見や孤独、そして自己を受け入れるまでの道のりが丁寧に描かれていきます。

当時、まだ社会的な認知度が低かった性同一性障害やLGBTQ+について、東野圭吾はミステリーという枠組みを通して問題提起を行いました。物語は、哲郎が美月の変貌に驚きつつも次第に受け入れ、彼女（彼）を守ろうと奮闘する姿を軸に、友情や絆、事件の真相解明へと展開していきます。

『片想い』は、ミステリーやサスペンスの要素に加え、ジェンダー問題や社会的マイノリティへの理解を深める作品として高く評価されました。人間の多様性を受け入れる重要性を説くと同時に、「幸せに生きる」とは何かを問いかける、東野圭吾の新境地ともいえる一作です。

『片思い』の　あらすじ

『片想い』は、東野圭吾による長編サスペンスで、性同一性障害やLGBTQ+の問題をテーマに描いた社会派ミステリーです。物語は、元帝都大学アメリカンフットボール部の仲間たちが集う年に一度の飲み会で幕を開けます。その夜、主人公の西脇哲郎は、10年ぶりに元女子マネージャーの日浦美月と再会します。しかし、美月は以前の姿とは全く異なり、男性として生活していました。美月は自身が性同一性障害であることを告白するとともに、ある人物を殺したと語り、哲郎を驚かせます。

哲郎と彼の妻であり、元マネージャー仲間の理沙子は、美月を警察に引き渡すのではなく、彼女を匿う道を選びます。やがて、美月の元恋人であり、アメフト仲間の中尾功輔も協力を申し出て、彼らは美月を守るために動き出します。しかし、ある日、美月が忽然と姿を消し、それに呼応するように功輔も行方不明となります。二人の行方を追う中で、哲郎たちは美月の過去や抱えていた秘密、そして事件の真相に少しずつ迫っていきます。

物語には、美月をはじめとして、戸籍を変えたトランスジェンダーの人物や、半陰陽の陸上選手、いわゆるオネエと呼ばれるキャラクターなど、様々な性的マイノリティが登場します。彼らが抱える葛藤や社会からの偏見、そして自らのアイデンティティを模索する姿が丁寧に描かれています。東野圭吾はこの作品を通して、性別やジェンダーにまつわる固定観念を問い直し、異なる背景を持つ人々への理解と共感を呼びかけます。

また、本作は単なる社会問題を扱った小説ではなく、ミステリーとしても秀逸です。美月が語った殺人事件の真相とは何か？その背景に隠された驚くべき事実とは？哲郎たちの絆と苦悩を軸に、緊張感のあるストーリーが展開されます。

『片想い』は、ミステリーとしての面白さだけでなく、現代社会におけるジェンダーやアイデンティティについて深く考えさせられる作品です。性別やセクシュアリティに対する偏見が未だ根強い中で、この物語が提起するテーマは、読む者の心に強く響きます。