『カッコウの卵は誰のもの』とは
『カッコウの卵は誰のもの』は、東野圭吾による長編サスペンス小説。光文社のスポーツ月刊誌『バーサス』にて2004年10月号から2006年3月号まで連載され、その後、小説誌『小説宝石』でも連載が続けられた。連載時のタイトルは『フェイク』であったが、2010年1月に単行本化される際に現タイトルに改題された。さらに2013年には文庫版も刊行された。物語はスキー競技の世界を舞台に、天才的な才能を持つスキー選手とその父親、そして彼らを取り巻く秘密や脅迫事件を描く。東野圭吾ならではの緻密なストーリーテリングと衝撃的な真実が読者を引き込む作品である。
2016年春にはWOWOWにてテレビドラマ化され、多くの視聴者の支持を得た。スキー競技に隠された科学的視点と人間関係のドラマ、さらに家族の絆をテーマにしたストーリーは、見る者を深く考えさせる内容となっている。
『カッコウの卵は誰のもの』の あらすじ
緋田宏昌はかつてオリンピックに出場したトップスキーヤーであり、その娘・緋田風美は父の才能を受け継いだ天才スキーヤーとして成長していた。彼女はその技術とセンスで周囲からの期待を一身に受けていたが、風美の才能には「遺伝」の視点から秘密が隠されていた。
新世開発スポーツ科学研究所の柚木洋輔は、スキー競技における遺伝子と才能の関連性を研究する科学者で、緋田親子に遺伝子検査への協力を依頼する。しかし、宏昌はその申し出を断る。彼にはどうしても隠さなければならない秘密があった。それは、風美が実の娘ではないという事実であり、宏昌がそれを知ったのは妻が自殺した後のことだった。この秘密を公にすることは、風美の人生を一変させる恐れがあった。
そんな中、風美が所属する新世開発スキー部に脅迫状が届く。「風美をチームから外せ」との内容に動揺が広がるが、当初はいたずらの可能性も考えられた。しかし、事件はさらに深刻な事態を迎える。風美が乗る予定だったバスに細工が施され、その結果バスは事故を起こし、負傷者が出たのだ。偶然にも風美はバスを降りていたために難を逃れたが、事故に遭った中には風美の実の父親・上条伸行も含まれており、彼は意識不明の重体となる。
上条は事故の直前に風美に接触していたが、自分が実父であることを名乗らずに「ファン」を装っていた。風美は事故の原因を自分にあると感じ、罪悪感に苛まれる。そんな風美に真実を告げるべきか、宏昌は葛藤する。しかし、上条が風美に会いに来た真の理由を知った宏昌は、ついに風美に出生の秘密を明かす決意をする。
この物語は、父娘の絆、家族の真実、そして才能への嫉妬や野望が交錯する複雑な人間関係を描きつつ、スキー競技というスポーツの魅力と危険性をリアルに映し出している。やがて明らかになる脅迫事件の意外な真相とは何か。そして風美は自らのルーツを知り、どのように未来を切り開いていくのか。東野圭吾ならではの深い洞察とドラマティックな展開が、最後まで読者を惹きつける。
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