『十字屋敷のピエロ』とは
東野圭吾の推理小説『十字屋敷のピエロ』は、1989年に講談社から単行本として刊行され、1992年に文庫版が発売されました。
本作は、資産家一族が暮らす「十字屋敷」を舞台に、彼らを襲う惨劇の数々を描いた本格長編推理小説です。物語は「悲劇をもたらす」と噂されるピエロ人形「僕」の視点を通して語られ、読者は事件の目撃者となる「僕」の言葉から真相に迫ります。犯罪者たちはただの人形である「僕」の前で無防備な姿をさらし、次第に謎が解き明かされていきます。
ラストには「僕」の心に深い影を落とす意外な結末が待ち受けており、読後感に独特の余韻を残す作品です。ユニークな語り口と巧妙なプロットが魅力の、東野圭吾の初期代表作の一つです。
『十字屋敷のピエロ』の あらすじ
上空から見ると十字の形をしていることから「十字屋敷」と呼ばれる屋敷に住む竹宮家。ある日、この屋敷に「持ち主に不幸をもたらす」と言われるピエロ人形が持ち込まれる。その夜、竹宮産業の女社長である頼子が飛び降り自殺し、屋敷内は騒然となる。
四十九日法要のため、頼子の姪である竹宮水穂が十字屋敷を訪れるが、そこで新たな悲劇が起こる。当主の宗彦がオーディオルームで刺殺され、その傍らでは秘書の三田理恵子も胸を刺されて亡くなっていた。この殺人事件を唯一目撃していたのは、部屋に置かれたピエロ人形だけ。
水穂は警察が外部犯を追う一方で、屋敷の内部に犯人がいる可能性を疑い調査を始める。青江によると、屋敷の住人たちは皆、少なからず宗彦に恨みを抱いていたという。
ピエロ人形に秘められた謎と竹宮家に渦巻く複雑な人間関係。資産家一族を襲う連続殺人事件の真相とは――ピエロの視点を交えた斬新な語り口が読者を引き込む新感覚ミステリー。
コメント