「一般社団法人」という言葉は聞いたことがあっても、株式会社との違いや“非営利型と営利型”という区別がよくわからない…という人は多いものです。
実は、一般社団法人は 出資者がいない法人 で、特定の目的のために集まった人々が活動するための器としてつくられる組織。
非営利型であっても 収益事業は可能 で、営利型との違いは「剰余金や財産を分配できるかどうか」にあります。
この記事では、一般社団法人の基本的な仕組みから、非営利型と営利型の違いまで、初めての方にもわかりやすく解説します。
🏢 一般社団法人とは?
一般社団法人とは、共通の目的を持つ人が2名以上集まることで設立できる「社団(=人の集まり)」を基盤とした法人です。
株式会社のように出資者を募る必要はなく、資本金も不要。
「営利を目的としない」とされていますが、これは 「利益を社員に分配することを目的としない 」という意味であり、収益事業そのものを行ってはいけないわけではありません。
一般社団法人は、スポーツ団体、学術団体、地域コミュニティ、福祉活動団体、ビジネス系の団体など、幅広い分野で利用されている柔軟性の高い法人形態です。
構成員である「社員」が意思決定を行い、法人としての活動を運営していく点が特徴です。
🧩 一般社団法人の特徴
一般社団法人には、株式会社やNPO法人とは異なる、いくつかの特徴があります。
ここでは、初めて知る人でもイメージしやすいように、ポイントを整理して解説します。
● 出資を必要としない
一般社団法人は 資本金ゼロで設立できる法人 です。
出資者が存在しないため、出資比率に応じた議決権や利益配分といった仕組みはありません。
「特定の目的のために集まった人(社員)がつくる法人」という点が大きな特徴です。
● 社員に“持ち分”がない
株式会社には株主の「持ち分」がありますが、一般社団法人には存在しません。
そのため、法人が蓄えた財産は「誰かのもの」という扱いではなく、法人そのものの財産 となります。
持ち分がないため、出資者の入れ替わりや権利関係の複雑さが生じにくいメリットもあります。
● 剰余金の分配ができるかは種類で異なる
一般社団法人には、
- 非営利型(剰余金・残余財産の分配ができない)
- 営利型(一定条件で分配が可能になる)
という2種類があります。
どちらを選ぶかで、活動の幅や財産の扱いが大きく変わるため、目的に応じた選択が重要です。
● 機関設計が柔軟でシンプル
一般社団法人の基本的な機関は
- 社員総会
- 理事(1名以上)
だけでも成立します。
監事を置くかどうかも任意で、株式会社ほど厳格な機関構造が求められないため、小規模団体でも運営しやすい という利点があります。
🔍 非営利型と営利型の違い
一般社団法人には「非営利型」と「営利型」の2種類があり、最大の違いは“利益(剰余金)や財産を分配できるかどうか” にあります。
収益活動そのものは、どちらのタイプでも可能ですが、「利益をどう扱うか」で性質が大きく変わります。
● 非営利型一般社団法人とは
非営利型一般社団法人は、その名の通り 利益の分配を目的としない法人 です。
特徴:
- 剰余金を社員に分配できない
- 法人を解散したときも 残った財産を社員に分配できない
- 活動目的が公益性・社会性のあるものに向きやすい
- 税制上、営利型より有利となるケースがある
向いている用途の例:
スポーツ団体、学術団体、地域活動、ボランティア組織、業界団体など
● 営利型一般社団法人とは
一般社団法人であっても、営利型に分類されると 利益を構成員に分配することが可能 になります。
特徴:
- 条件を満たした場合、剰余金の分配が可能
- 解散時に 残余財産を社員に分配できる場合がある
- 株式会社のような“出資者中心の組織”ではない
- 収益事業を積極的に展開する団体に向く
向いている用途の例:
ビジネス系の協会、コンサル型の団体、共同事業を行う組織など
● どちらを選ぶ?(違いを簡潔に比較)
| 比較項目 | 非営利型 | 営利型 |
|---|---|---|
| 剰余金の分配 | ❌ 不可 | ⭕ 条件により可 |
| 残余財産の分配 | ❌ 不可 | ⭕ 可の場合あり |
| 税制 | 有利になる場合あり | 一般の法人税が適用 |
| 活動目的 | 公益性・社会性重視 | 収益事業も積極的に可能 |
| 向く団体 | 社会活動系・地域団体など | ビジネス系・協業団体 |
一般社団法人を設立する際は、団体の目的 と 利益の扱いをどうするか を考えて選択することがポイントになります。
✅ 一般社団法人でできること・できないこと
一般社団法人というと「非営利だからお金を稼いではいけない」と誤解されがちですが、実際には 収益活動そのものは問題なく行えます。
ただし、種類(非営利型/営利型)によって“利益の扱い”に制限がある点が大きなポイントです。
● 一般社団法人でできること
一般社団法人は、次のような幅広い活動を行うことが可能です。
- 収益事業の展開(物販、サービス提供、コンサルティング、イベント運営など)
- 会費の徴収(会員制モデルは一般社団法人と相性が良い)
- 補助金・委託事業の受け入れ
- 寄付金の受け入れ(非営利型は特に相性が良い)
- 研修会・講座・セミナーの開催
このように、一般社団法人は「非営利=収益禁止」ではなく、むしろ 社会的信用を得やすい形でビジネス的な活動を行える法人 として使われるケースも増えています。
● 一般社団法人でできないこと
一方で、次のような点には制限があります。
- 非営利型の場合:剰余金や残余財産の分配ができない
→ 収益が出ても、構成員(社員)で山分けする目的では使えない - 株式の発行はできない
→ 株式会社のように出資を募る仕組みは持てない - 営利追求を“主目的”にすることはできない
→ 営利はあくまで活動の手段。目的に設定すると一般社団法人の要件から外れる
これらを理解しておくことで、団体として何ができて何ができないのかを明確に把握できます。
🏢 株式会社との違い
一般社団法人と株式会社は、どちらも「法人格を持つ組織」ですが、目的・仕組み・お金の扱い が大きく異なります。
ここでは、読者がひと目で理解できるように重要な違いを整理します。
① 目的の違い
- 一般社団法人:特定の目的を達成するために集まった人々の団体。利益の分配を主目的にはできない。
- 株式会社:株主の利益を最大化することが基本的な目的。利益追求が中心。
② お金の集め方の違い
- 一般社団法人:出資者がいないため 株式を発行できない。資金は会費・収益事業・寄付などで集める。
- 株式会社:株式を発行し、出資を募ることで資金調達を行う。
③ 財産の扱いの違い
- 一般社団法人:社員に「持ち分」がなく、財産は法人そのものの財産。
→ 非営利型の場合、剰余金や残余財産の分配は不可。 - 株式会社:株主が持ち分(株式)を保有し、利益に応じて配当が受けられる。
④ 意思決定の仕組みの違い
- 一般社団法人:最高意思決定機関は 社員総会。
- 株式会社:株主総会が最高決議機関で、株主の議決権により方針が決まる。
⑤ 活動の自由度の違い
- 一般社団法人:利益を目的としなければ、公益活動・地域活動・収益事業など幅広く運営可能。
- 株式会社:利益につながらない活動でも可能だが、株主利益との整合性が求められる。
📝 結論
一般社団法人は「人が集まって活動する器」であり、株式会社は「出資者が利益を得るための仕組み」という違いが本質です。
団体の目的に合わせて、どちらの法人形態が適しているかが変わってきます。
📝 一般社団法人の設立方法
一般社団法人は、株式会社よりも比較的シンプルな手続きで設立できる法人です。
ここでは、初めての方でも流れがつかめるように、基本的なステップを順番に説明します。
① 社員(構成員)を2名以上そろえる
一般社団法人の設立には、社員が2名以上 必要です。
ここでいう「社員」は従業員のことではなく、法人の意思決定に参加する“構成員”を指します。
② 定款を作成する
団体の目的・名称・所在地・事業内容などを記した「定款」を作成します。
株式会社と違って、一般社団法人は 公証役場での定款認証が不要 という点が特徴で、手続きの手間が少なくてすみます。
③ 機関設計を決める
最低限必要なのは 理事1名以上。
監事を置くかどうか、理事会を設置するかなどは任意で決められるため、規模に合わせた柔軟な設計が可能です。
④ 設立登記を行う
法務局で「設立登記」を行うことで法人として成立します。
必要書類の例:
- 設立登記申請書
- 定款
- 就任承諾書(理事・監事)
- 社員名簿 など
⑤ 設立にかかる費用
一般社団法人の設立費用は比較的少なく、
- 登録免許税:6万円
が基本です(電子手続きなどで変動する部分はありません)。
株式会社よりも費用が安く、定款認証も不要なため、気軽に設立しやすい法人形態です。
📌 一般社団法人のメリット・デメリット
一般社団法人は、柔軟な活動ができる一方で、目的によっては向き不向きがあります。
ここでは、検討時に知っておきたいメリットとデメリットを整理します。
● メリット
✔ 出資が不要で設立しやすい
資本金がいらず、定款認証も不要のため、低コストで始められる法人 として魅力があります。
✔ 社会的信用が得やすい
法人格を持つことで、団体の信頼性が高まり、取引・契約・補助金申請などがスムーズになります。
✔ 目的に合わせた柔軟な活動が可能
公益活動・地域活動・教育事業・収益事業など、活動範囲が広く、多様な形態に対応可能です。
✔ 社員に持ち分がなく、組織が安定しやすい
株式会社のように株式の売買で支配権が変わることがないため、運営が安定しやすい という利点があります。
● デメリット
✔ 非営利型の場合、利益や財産の分配ができない
収益が出てもメンバーが自由に分配できず、あくまでも活動の継続に使う必要があります。
✔ 法人としての維持管理が必要
役員変更・事業報告書の作成・登記の更新など、手続き的な負担 が一定数発生します。
✔ 営利活動を主目的にはできない
収益事業は可能ですが、“利益追求そのもの” を目的にすると一般社団法人の要件と合わなくなります。
一般社団法人は、目的に沿った活動がしやすい一方、営利目的では使いづらい部分もあります。
設立前に、団体のゴールに合っているかどうかを慎重に検討することが大切です。
📝 まとめ
一般社団法人は、出資者を必要とせず、目的を共有する人々が活動するための柔軟な法人形態です。
非営利型と営利型の違いは「利益や財産を分配できるかどうか」がポイントで、団体の目的によって適したタイプが変わります。
収益事業も可能で、社会的信用を得やすいというメリットがある一方、営利を主目的にできない点には注意が必要です。
これから法人化を検討する場合は、団体の目的や将来像を踏まえ、一般社団法人が最適な選択肢かどうかをじっくり見極めてみてください。


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