『毒笑小説』とは
『毒笑小説』(どくしょうしょうせつ)は、東野圭吾によるユーモア短編小説集で、『笑小説』シリーズの第2作。1992年から小説誌『小説すばる』や『週刊小説』などに掲載された作品をまとめ、1996年7月26日に集英社から単行本として刊行されました。その後、1999年2月19日に集英社文庫版が発行されました。
本作は、日常に潜む奇妙な出来事や人間関係の矛盾をブラックジョークを交えて描いた12編の短篇を収録。ユーモラスでありながら毒の効いた風刺が特徴的で、東野圭吾の軽妙な筆致が光ります。
文庫版の巻末には京極夏彦との対談が収録され、両者が「笑い」の本質について語り合うほか、東野の代表作『秘密』の執筆秘話も披露されており、ファンには見逃せない内容となっています。
笑いと毒を兼ね備えた短編が揃った本作は、東野圭吾のユーモアの真骨頂を堪能できる一冊です。
『毒笑小説』の あらすじ
『毒笑小説』は、東野圭吾が織りなすブラックユーモアと社会風刺を効かせた短篇集で、12の作品が収録されています。巧妙なプロットに奇想天外な設定、そして皮肉な結末が読者を楽しませます。それぞれの物語は独立しつつも、どこか共通するテーマとして人間の滑稽さや社会の矛盾を描き出しています。
1. 誘拐天国
孫と過ごす時間が欲しい財閥の重鎮・福富豊作は、麻雀仲間たちと孫の「偽装誘拐計画」を企てます。だがその計画が意外な方向へと進展し、思わぬ結末を迎えることに…。
2. エンジェル
南太平洋の小島で発見された謎の生物「エンジェル」は、天使に似た容姿で一躍話題になります。しかし、その生物が持つ特異な習性が、やがて人間社会に驚異をもたらします。
3. 手作りマダム
毎月のティーパーティーで手作りの粗悪な品々を振る舞う富岡夫人。部下の妻たちは彼女に振り回され、ついにその不満が爆発。しかし、その怒りが新たな問題を引き起こします。
4. マニュアル警察
妻を殺害した只野一郎は自首を決意しますが、警察署では「事件通報の手続きが先」と言われます。次々とマニュアルに従った手続きが要求され、事態は予想外の展開に。
5. ホームアローンじいさん
家族が外出し、一人留守番をする伸太郎じいさん。こっそり孫の隠し持つアダルトビデオを見ようとしますが、機械操作に四苦八苦。その最中、家に泥棒が侵入するというハプニングが発生します。
6. 花婿人形
御茶之小路家の跡取り息子・茂秋は、母親の指示がなければ何もできないマザコン。結婚式で茂秋は大きな問題に直面し、その結果は思いもよらないものでした。
7. 女流作家
売れっ子の女流作家・宮岸玲子が出産を機に連載を一時中断。しかし復帰後は姿を見せず、原稿だけが編集部に届けられます。その裏に隠された驚くべき真実とは?
8. 殺意取扱説明書
失恋の恨みを抱える主人公が古書店で手にした「殺意取扱説明書」。それは冗談ではなく、殺意を増幅させる禁断のマニュアルだったのです。
9. つぐない
ピアノ教師の美穂は、ひょんなことから初老の男性を生徒に持つことに。彼がピアノを習おうとした理由に、美穂は驚きを隠せません。
10. 栄光の証言
誰からも注目されることのなかった正木孝三。しかしある殺人事件の目撃者となったことで、突如スポットライトを浴びる日々が始まります。しかし、その栄光はやがて…。
11. 本格推理関連グッズ鑑定ショー
ある推理小説ファンが、伝説の密室事件のトリックに使われた「心張り棒」を鑑定に出します。だが、意外な評価額が下され…。
12. 誘拐電話網
誘拐犯を名乗る男から身代金を要求する電話が入ります。しかし、被害者の親ではなく赤の他人に電話をかけた理由とは?奇妙な交渉の行方はどうなるのか。
社会の裏側に潜む皮肉とユーモアを、東野圭吾が独自の視点で描いた傑作短篇集。笑いと驚きが詰まった12の物語をお楽しみください。
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