東野圭吾 著 『白夜行』って どんな本?

東野圭吾『白夜行』 小説

『白夜行』は、東野圭吾による長編ミステリー小説。1997年1月から1999年1月まで『小説すばる』で連作短編として連載され、1999年8月に単行本として刊行された。その後、テレビドラマ化や映画化がされ、幅広い読者層から支持を受け、発行部数は2010年12月時点で200万部を突破する大ヒット作となった。

物語は1973年、大阪の廃墟ビルで質屋の男性が殺害される事件から始まる。捜査は難航し、次々に容疑者が浮かぶものの、決定的な証拠が見つからず事件は迷宮入りとなる。被害者の息子・桐原亮司と「容疑者」の娘・西本雪穂――暗い眼差しの少年と、並外れて美しい少女。この二人は事件後、それぞれ異なる人生を歩む。しかし、その後の19年間、二人の周囲では不審な事件や犯罪が次々に発生する。不思議なことに、どの事件にも直接的な証拠は見つからない。

本作の最大の特徴は、主人公である雪穂と亮司の心理描写が一切排除されている点である。読者は彼らの行動からその心理を推測するしかないが、それがかえって物語全体に漂う闇と不気味さを際立たせている。二人が幼少期に背負った絶望的な過去、そしてその後の生き方が描き出す冷徹な世界観は、読む者を引き込む圧倒的な迫力を持つ。

亮司は彼女のために父親を殺害し、その罪を隠蔽するため自らの母親に罪を着せ、さらには母をも手にかける。一方で、雪穂は罪の意識を見せることなく、目的を遂げるために巧妙に人を操る。二人が事実を隠しながら19年もの年月を共に過ごしていく様子は、恐ろしくも切ない逃亡劇そのものである。

この作品は、二人の関係性を軸に、罪と罰、人間の闇、そして生きることの悲哀を描く傑作として広く評価されている。

東野圭吾『白夜行』

『白夜行』

(集英社文庫)

1999年 8月 発売

1973年、大阪の廃墟ビルで質屋の主人・桐原洋介が殺害された。容疑者として浮かび上がったのは、洋介の客であった西本文代。しかし彼女には完璧なアリバイがあり、次に疑われたのは桐原の妻・弥生子と質屋の従業員・松浦勇だったが、彼らにもアリバイがあった。その後、西本文代の情夫・寺崎忠夫が浮上し、共犯の可能性が疑われたが、決定的な証拠がなく、さらに文代と寺崎が事故死したことで事件は迷宮入りする。捜査を担当していた笹垣刑事だけが、被害者の息子・桐原亮司の暗い目と、文代の娘・雪穂の異常なほどの利発さに不自然さを感じ、心に引っ掛かるものを覚えていた。

事件後、亮司と雪穂はそれぞれ異なる道を歩む。雪穂は親戚に引き取られ、唐沢雪穂として名門女子学園に進学。一方、亮司は普通の中学に通うが、成長するにつれて売春組織の運営や犯罪に手を染めるようになる。二人の関係は表面上は全くの無関係に見えるが、その裏では暗い糸で結ばれていた。亮司は雪穂を守るため、雪穂に危害を加える者を排除し、犯罪を重ねていく。

雪穂の学校生活でも事件が起きる。過去を暴こうとした同級生・藤村都子が襲われ、犯人と疑われたのは亮司の同級生・菊池文彦だった。菊池は、亮司の家族に関するスキャンダル写真をネタに脅迫しようとしていたが、事件を機に亮司も雪穂も過去に触れることを避けるようになる。

しかし、それ以降も二人の周囲では不可解な事件が続発する。亮司は犯罪によって雪穂を助け続け、雪穂はその恩恵で次第に社会的地位を確立し、実業家として成功を収めていく。そんな中、退職を目前に控えた笹垣刑事が再び二人の前に立ちはだかる。笹垣はこれまでの事件の裏に二人の影があることを確信し、独自の捜査を進める。そして、桐原洋介殺害事件の本当の真実を掴む。

亮司と雪穂――彼らの関係は、幼い頃に形成された異常な“共生関係”であり、二人はお互いを補完しながら罪深い道を歩んできた。しかし、雪穂が高級ブティックを開店した頃、亮司は警察に追い詰められ、自ら命を絶つ。彼の死を目撃した雪穂は、一切動揺することなく無関係を装い、自身の成功への道を歩み続ける。雪穂と亮司が共有していた“白夜”――その冷たくも悲しい光は、彼らの人生を照らし続ける。

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