『ブラック・ショーマンと覚醒する女たち』とは
『ブラック・ショーマンと覚醒する女たち』は、東野圭吾による連作短編集であり、「ブラック・ショーマン」シリーズの第2作にあたる。2024年1月30日に光文社より刊行された本作は、前作『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』に続き、元マジシャンで現在はバー「トラップハンド」のマスターを務める神尾武史を主人公に、彼の巧妙な推理とマジックのような仕掛けが冴え渡るミステリー作品となっている。
本作には、光文社の読者プレゼント企画で書かれた1編、2022年4月号から2023年4月号までアンソロジー文庫『Jミステリー』(光文社)に掲載された3編、さらに書き下ろしの2編を加えた計6編が収録されている。物語の舞台は「トラップハンド」という謎めいたバーで、そこに訪れる女性たちが、マスター・武史の手により変貌を遂げていく。姪の真世や前作の登場人物である父・英一も回想シーンに登場し、シリーズとしての繋がりを持たせながらも、新たなドラマを生み出している。
本作では、遺産相続、婚活、偽装、不倫、復讐など、現代社会に潜むさまざまな問題を背景に、神尾武史がそのマジシャンのごときトリックと観察眼を駆使して、真実を暴き、時には救いの手を差し伸べる。彼の巧妙な謎解きにより、登場する女性たちは真実に目覚め、人生の新たな一歩を踏み出していく。
果たして、彼女たちの人生を変えた「魔法」とは何なのか?バー「トラップハンド」に流れる不可思議な時間と、そこで明かされる驚きの真相の数々。東野圭吾さんが織りなす、ミステリーと人間ドラマが交錯する連作短編集は、シリーズファンのみならず、多くの読者を魅了すること間違いない。
『ブラック・ショーマンと覚醒する女たち』の あらすじ
本作は、恵比寿の隠れ家的バー「トラップハンド」を舞台に、6つのミステリアスなエピソードが展開される。マスターを務めるのは、かつて「ブラック・ショーマン」と呼ばれた元マジシャン・神尾武史。彼の店を訪れる女性たちは、過去の秘密、現在の危機、未来への不安を抱えているが、武史の鋭い洞察力と巧妙な推理が彼女たちを思わぬ真実へと導いていく。
「トラップハンド」
婚活サイトで知り合った男性・清川と食事をした後、陣内美菜は彼の案内で「トラップハンド」というバーを訪れる。理想的な男性に思えた清川だったが、マスター・武史の機転により、美菜は最悪の事態を回避することになる。果たして、清川が隠していた秘密とは?
「リノベの女」
大富豪の上松孝吉から莫大な遺産を相続した妻・和美は、高級マンションのリノベーションを神尾真世に依頼する。ところが、音信不通だった兄・竹内が突如現れ、「お前は和美ではない」と告げる。兄の主張は真実なのか、それとも彼の策略なのか?ブラック・ショーマン・武史が、この奇妙な兄妹の謎に挑む。
「マボロシの女」
ウッド・ベース奏者の高藤智也と不倫関係にあった火野柚希。彼は妻と別居状態であり、半年後には離婚が成立するはずだった。しかし、ある日、智也は交通事故で帰らぬ人となる。2年後、柚希は親友とともに「トラップハンド」を訪れるが、武史から思いもよらぬ事実を知らされる。智也の知られざる過去とは?
「相続人を宿す女」
リフォームの仕事を依頼されていた神尾真世は、依頼主の富永夫妻から急遽工事を中止するよう言われる。理由は、亡くなった息子・遥人の遺産を巡る新たな相続人が現れたためだった。その相続人は、遥人の元妻・沙智の胎内に宿る子供だった。しかし、武史が見抜いた沙智の本当の目的は単なる遺産相続ではなく…?
「続・リノベの女」
介助付き老人ホームに入居している末永久子のもとに、かつての知人から「娘の奈々恵が生きている」という目撃情報が寄せられる。しかし、奈々恵はすでに自殺しているはずだった。久子の依頼を受けた施設スタッフ・石崎直孝は、彼女の知人から情報を聞き出し、「トラップハンド」に辿り着く。果たして、奈々恵は本当に生きているのか?
「査定する女」
高級家具メーカー「バルバロックス」のインテリアコンサルタント・陣内美菜は、リフォームを依頼した資産家・栗塚正章に興味を示す。彼が莫大な財産を持っていることを確かめると、美菜は積極的に接近し、ついにプロポーズを受ける。しかし、武史は彼女に対し、思いもよらぬ「査定」を下すのだった。
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