スポンサーリンク

なぜ監査が必要なのか?|不正・不祥事を防ぐための仕組みをわかりやすく解説

なぜ監査が必要なのかを説明している女性のイラスト 雑記

ガバナンスが大切だと言われる理由は、組織が健全に運営され、不正や不祥事を防ぐためです。

しかし、どれだけ立派なルールや体制を整えても、それが本当に守られているかどうかは、別の問題です。

現場でルールが形骸化していたり、気づかないうちに慣例や忖度が優先されていたりすることは、どんな法人でも起こり得ます。

そこで重要になるのが 「監査」 です。

監査は、誰かを疑ったり、揚げ足を取ったりするためのものではありません。

組織の中で決められたルールや仕組みが、きちんと機能しているかを客観的に確認するための装置です。

ガバナンスが「設計図」だとすれば、監査はその設計図どおりに建物が建っているかを点検する作業とも言えます。

本記事では、

「なぜ監査が必要なのか?」

「監査がないと、組織はどうなってしまうのか?」

という疑問に答えながら、監査の本質的な役割をわかりやすく解説していきます。


スポンサーリンク

「監査」と聞くと、何か問題が起きたあとに行われる厳しいチェックや、不正を暴くための調査をイメージする人も多いかもしれません。

しかし本来の監査は、問題を見つけて責めるためのものではなく、問題が起きにくい状態を保つための仕組みです。

組織が決めたルールや手続きが、現場で適切に運用されているか。

お金や権限の使い方に、無理や歪みが生じていないか。

こうした点を、客観的な立場から確認するのが監査の役割です。


● 監査の基本的な役割

監査の役割をシンプルに整理すると、次のようになります。

  • 決められたルールや規程が守られているかを確認する
  • 会計や業務の流れに不自然な点がないかをチェックする
  • ミスや不正の「芽」を早い段階で見つける
  • 組織運営に改善が必要な点を明らかにする

重要なのは、監査は結果だけでなく「プロセス」を見るという点です。

数字が合っているかだけでなく、その数字がどのような手順で作られているのか、誰が判断し、誰がチェックしているのか、といった過程も確認します。


● 「管理」と「監査」の違い

監査とよく混同される言葉に「管理」があります。

この2つは似ているようで、役割が異なります。

  • 管理:組織の内部で、日常的に行うチェックや統制
  • 監査:一定の距離を保った立場から行う検証・確認

管理は、いわば「自己点検」です。

一方、監査は「第三者の目」に近い視点を持ちます。

自分たちでは問題ないと思っていたことが、外から見るとリスクに見えることもあります。

だからこそ、内部だけでは気づきにくいズレや甘さを補う役割として、監査が必要とされているのです。


「ルールもあるし、真面目に運営している。それでも監査は必要なの?」

こうした疑問を持つ人は少なくありません。

しかし、監査が必要とされる背景には、組織と人が持つ避けられない性質があります。


● 人はミスをする。誘惑にも弱い

どんなに誠実な人でも、常に完璧でい続けることはできません。

  • 単純な思い込みや確認漏れ
  • 業務の慣れによる判断の甘さ
  • 忙しさからくる「これくらい大丈夫だろう」という意識

こうした小さなズレは、意図せず不正や問題につながることがあります。

さらに、権限やお金を扱う立場になればなるほど、判断を一人で抱え込みやすくなり、結果として暴走や隠蔽が起きるリスクも高まります。

監査は、人の弱さを前提にした安全装置として機能します。


● 組織が大きくなるほど「見えなくなる」

組織は、規模が大きくなるほど、トップや経営層がすべてを把握することが難しくなります。

  • 現場の実態が上に伝わらない
  • 悪い情報ほど報告されにくい
  • 「空気」や「忖度」が判断を歪める

こうした状況では、問題があっても表に出ないまま時間だけが過ぎていきます。

監査は、普段の報告ルートとは別の経路で事実を確認し、組織の死角を照らす役割を担います。


● 「ガバナンスがある=安心」ではない

ガバナンス体制が整っているからといって、自動的に組織が健全に運営されるわけではありません。

  • ルールが現場に浸透していない
  • 形だけの会議や書類になっている
  • 誰も本気でチェックしていない

このような状態では、ガバナンスは「飾り」になってしまいます。

監査があることで初めて、ガバナンスが生きた仕組みとして機能しているかを確認できるのです。


監査がない、あるいは形だけになっている組織では、問題が起きやすくなるだけでなく、

問題が見えないまま深刻化しやすいという特徴があります。


● 不正・不祥事が長期化しやすい

監査が機能していない組織では、小さな不正やミスが見過ごされがちです。

  • 初期段階では「単なるミス」として処理される
  • 指摘する人がいない、または声を上げにくい
  • 問題が内部で隠され、表に出てこない

その結果、本来なら早期に修正できたはずの問題が、長期間放置され、取り返しのつかない不祥事へと発展します。

多くの組織不祥事は、「突然起きた」のではなく、「見逃され続けた結果」であるケースがほとんどです。


● 内部告発に頼る構造になる

監査がなければ、問題を表に出す手段が極端に限られてしまいます。

  • 正規のチェック機能が働かない
  • 上司や経営層に直接言えない
  • 最後の手段として内部告発に至る

内部告発そのものは、不正を正す重要な行為ですが、告発者に大きな負担やリスクがかかるのも事実です。

本来、個人の勇気に頼らなくても問題が表に出る仕組みが必要であり、その役割を担うのが監査です。


● 社会的信用を一気に失う

不祥事が発覚した際、問われるのは「何が起きたか」だけではありません。

  • なぜ防げなかったのか
  • チェック体制はどうなっていたのか
  • 監査は機能していたのか

監査が存在しない、または形骸化していた場合、組織の管理体制そのものが疑問視されます。

その結果、取引先、利用者、支援者、金融機関など、多くの関係者からの信頼を一気に失うリスクがあります。

信頼の回復には、長い時間と大きなコストがかかることも忘れてはいけません。


監査に対して、「厳しくチェックされる」「自由に動けなくなる」といったネガティブな印象を持つ人も少なくありません。

しかし実際には、監査は組織や人を縛るためのものではなく、守るための仕組みです。


● 現場を守る役割もある

監査が機能している組織では、業務の進め方や判断基準が明確になります。

  • ルールに沿って行動していれば問題にならない
  • 判断の根拠を説明しやすくなる
  • 後から責任を押しつけられにくい

これは、現場で働く人にとって大きな安心材料です。

監査があることで、「個人の判断ミス」や「現場のせい」にされるリスクを減らし、組織としての責任の取り方を明確にできます。


● 経営者・役員を守る仕組みでもある

監査は、現場だけでなく、経営者や役員にとっても重要な役割を果たします。

  • 独断や思い込みを防ぐブレーキになる
  • 判断の妥当性を第三者視点で確認できる
  • 説明責任を果たす材料になる

万が一問題が起きた場合でも、「適切な監査体制を整えていたかどうか」は、経営責任を判断する重要な要素になります。

つまり監査は、経営判断を支えるセーフティネットでもあるのです。


「監査は大企業や株式会社の話では?」

そう思われがちですが、実際にはほとんどすべての組織に関係する仕組みです。


● 株式会社だけの話ではない

監査が必要とされるのは、営利企業だけではありません。

  • 公益法人
  • 医療法人
  • 学校法人
  • 社会福祉法人
  • NPO法人

これらの法人も、お金や権限を扱い、社会的な責任を負っています。

特に非営利法人の場合、「利益を追求しない=チェックが緩くなりやすい」という落とし穴があります。

だからこそ、目的が公益であっても、運営の透明性を保つために監査が重要なのです。


● 規模が小さくても例外ではない

「うちは人数も少ないし、監査なんて大げさでは?」という声もよく聞かれます。

しかし実際には、小規模な組織ほど監査が重要になるケースもあります。

  • 一人が複数の役割を兼ねている
  • お金と権限が特定の人に集中しやすい
  • 人間関係が近く、指摘しにくい

こうした環境では、悪意がなくてもミスや不正が起きやすく、しかも周囲が気づきにくくなります。

監査は、「人数が多いから必要」なのではなく、人と権限が存在する以上、必要になる仕組みだといえます。


ガバナンスと監査は、どちらか一方があれば十分、という関係ではありません。

この2つは、役割の異なるセットとして機能してこそ意味を持ちます。


● ガバナンスが「設計図」なら、監査は「点検」

ガバナンスは、組織をどう運営するかを定めた設計図のようなものです。

  • 意思決定のルール
  • 権限と責任の分担
  • チェック体制の構造

一方、監査は、その設計図どおりに運営が行われているかを確認する点検作業にあたります。

どれほど優れた設計図があっても、建物が図面どおりに建てられているかを確認しなければ、安全かどうかはわかりません。


● どちらか一方だけでは不十分

ガバナンスと監査は、片方だけでは不完全です。

  • ガバナンスだけがある場合 ➡️ ルールが形骸化しやすい
  • 監査だけがある場合 ➡️ その場しのぎの指摘に終わりやすい

ガバナンスで「どうあるべきか」を定め、監査で「本当にそうなっているか」を確かめる。

この循環があって初めて、組織は健全な状態を保つことができます。


監査は、誰かを疑ったり、縛りつけたりするための仕組みではありません。

人はミスをする。

組織は大きくなるほど、見えにくくなる。

そうした現実を前提に、問題が起きる前に気づき、修正するための安全装置が監査です。

ガバナンスによって整えた仕組みが、きちんと機能しているかを確かめることで、組織は社会からの信頼を積み重ねていくことができます。

監査とは、不信を前提にする制度ではなく、信頼を守り続けるための仕組みなのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました