発展途上国と呼ばれる国々は、経済の成長段階にありながらも、さまざまな課題に直面しています。
教育や医療、インフラの整備が不十分で、政治の不安定さや深刻な貧困に悩まされている地域も少なくありません。
こうした問題は単なる「発展の遅れ」ではなく、歴史的背景や構造的な問題が深く関係しています。
この記事では、発展途上国が抱える代表的な課題とその背景について、やさしく整理してご紹介します。
世界の不平等や格差を理解する第一歩として、ぜひ参考にしてください。
発展途上国とは?簡単におさらい
「発展途上国(Developing Countries)」とは、経済的・社会的な発展の途中にある国々を指します。
先進国に比べて、教育・医療・インフラ・政治制度などの整備が十分でなく、生活水準や経済力に差がある国々が多いのが特徴です。
🌍 主な発展途上国の例
- アジア:バングラデシュ、カンボジア、ネパール、ラオスなど
- アフリカ:ケニア、ナイジェリア、エチオピア、タンザニアなど
- 中南米:ボリビア、グアテマラ、ハイチなど
※世界銀行や国連などが、所得や経済状況をもとに分類しています。
⚠️ 「発展途上国=後れている」ではない
- 発展途上国の中には、急成長している新興国(例:インド、インドネシア)も存在します
- 「発展していない国」ではなく、「発展の途中にある国」としてとらえるのが大切です
このような国々がどのような課題を抱えているのか、次のセクションから詳しく見ていきましょう。
貧困と格差の深刻さ
発展途上国が直面している最も根本的な問題のひとつが、深刻な貧困です。
毎日の食事や住まいすらままならない人々が多く存在し、命や生活に直結する困難を抱えています。
💸 絶対的貧困とは?
世界銀行の定義によると、「1日2.15ドル未満」で暮らす人々は絶対的貧困層とされます。
これは食料や衣服、住居、医療といった最低限の生活を維持することも難しい水準です。
🌍 約7億人(世界人口の約9%)がこの状態にあると言われています(2023年時点)
⚖️ 格差も広がっている
発展途上国では、都市と農村の格差や富裕層と貧困層の差が非常に大きいのも特徴です。
さらに、女性・子ども・障害者・少数民族など社会的に弱い立場にある人々ほど、貧困の影響を強く受けます。
🛑 貧困がもたらす連鎖
- 教育を受けられない → 就職が困難 → 収入が得られない
- 病気になっても医療を受けられない → 生活困難が悪化
- 食料不足 → 栄養不良・発育不良 → 将来の労働力が弱体化
このように、貧困はさまざまな課題と深くつながっており、世代を超えて影響する連鎖を生み出しています。
教育と識字率の問題
発展途上国では、教育の機会が限られていることも大きな課題です。
学校に通えない子どもたちが多く、基本的な読み書きすらできないまま大人になる人も少なくありません。
🎓 学校に行けない子どもたち
- 家計を支えるために働かざるを得ない
- 通学に数時間かかる、学校が遠い
- 教師不足・教室不足・教材不足などの設備面の問題
- 紛争地域では、安全な学習環境がないことも
🌍 ユネスコによると、初等教育すら受けられていない子どもは世界で約5,700万人(2022年時点)
🧾 識字率の低さと影響
- 識字率(読み書きができる人の割合)が低いと、就職の選択肢が限られる
- 病気や災害への対応、選挙などの社会参加も難しくなる
- 生活の質が向上しにくく、貧困の連鎖を断ち切れない
🚺 特に深刻なのは女性や少数民族
- 女性は文化的・宗教的な理由から教育を受けにくい場合も
- 少数民族や障害のある子どもたちは差別や制度の壁に直面する
- 「学校に行けるかどうか」は、生まれた場所や性別によって大きく左右されるのが現実
教育は人の可能性を広げる基盤であり、社会全体の発展にも直結します。
それだけに、教育格差は発展途上国にとって極めて深刻な課題なのです。
医療・衛生環境の不備
発展途上国では、医療体制や衛生環境が整っていない地域が多く、予防可能な病気で命を落とす人々が今も大勢います。
医師や病院が足りず、ワクチンや薬も手に入らないことが、命に直結する問題となっています。
🏥 医療サービスの不足
- 病院や診療所が遠く、交通手段も整っていない
- 医師・看護師・薬剤師などの医療人材が極端に不足
- 費用が高すぎて病院に行けない人も多い
- 器具・設備・薬が不十分で、先進国では治る病気でも命を落とす
🦠 感染症の流行と影響
- マラリア、結核、HIV/AIDSなどの感染症が深刻
- 乳幼児の予防接種率が低く、死亡率が高い
- パンデミック(例:COVID-19)では、医療崩壊の危険が高い
🚰 衛生環境の課題
- 清潔な飲み水が手に入らない
- トイレがない、または共用で不衛生なケースも
- 排水設備の整備不足 → 下痢性疾患・寄生虫の蔓延
🌍 世界では、いまだに20億人以上が「安全に管理された水源を使えない」とされています(WHO, 2023)
健康はすべての基本です。
しかし発展途上国では、「あたりまえの医療や衛生環境」がまだ届いていない人々が大勢いる現実があります。
インフラの未整備
発展途上国の多くでは、生活や経済活動を支える基本的なインフラ(社会基盤)がまだ十分に整っていません。
このことが、人々の生活の質を下げ、経済成長の足かせにもなっています。
🛣 交通インフラの不足
- 道路が舗装されておらず、雨季になると通行困難に
- 橋や鉄道がないため、物資や人の移動に時間とコストがかかる
- 医療機関や学校へのアクセスも制限されがち
💡 電力・通信の問題
- 電気が通っていない村や地域も多い(特にアフリカ内陸部など)
- 停電が日常的で、冷蔵庫・照明・機械が使えない
- インターネットや携帯通信も未整備で、情報格差が生じている
🚿 上下水道・住宅環境
- 水道が通っていない → 池や川の水を使う → 感染症リスク増
- 排水やゴミの処理ができず、街が不衛生に
- スラムや密集地では、火災・洪水などの災害にも弱い
📦 インフラ未整備がもたらす影響
- 生産活動や流通がスムーズに行えない
- 外国企業が進出しづらく、雇用も増えにくい
- 災害・感染症の対応力が弱く、被害が広がりやすい
インフラは、暮らしと経済の「土台」です。
それが整っていなければ、どんなに努力しても社会はなかなか前に進みません。
政治の不安定と汚職
発展途上国の多くでは、政治の不安定さや政府の腐敗(汚職)が、社会の発展を妨げる大きな要因となっています。
どれだけ援助や支援があっても、政治が機能していなければその恩恵が人々に届かないのです。
🧨 政治の不安定とは?
- クーデター、内戦、暴動が頻発する国も多い
- 政権が頻繁に交代し、長期的な政策が実行できない
- 政治的な混乱が投資や貿易の障壁となり、経済成長が止まる
💰 汚職の深刻さ
- 税金や国際援助が一部の権力者や官僚に流れ、一般市民に届かない
- 公共事業に不正が多く、道路や病院の建設が途中で止まる
- お金を払わないと基本的な手続きや医療も受けられない国も
😞 国民の不信と悪循環
- 政治に期待できず、選挙にも行かない → 改革が進まない
- 政治家も国民も「どうせ変わらない」とあきらめてしまう
- 結果として、インフラ・教育・医療など社会全体の発展が遅れる
政治の安定と信頼性は、国づくりの根本です。
しかしそれが脆弱なままでは、いくら外から支援があっても真の発展にはつながりにくいのです。
国際支援と現地の自立支援の重要性
発展途上国が抱えるさまざまな課題に対して、国際社会は長年にわたり支援活動を行ってきました。
しかし、最近では「与える支援」から「自立を促す支援」へと方向が変わりつつあります。
🌐 主な支援のかたち
- ODA(政府開発援助):先進国が政府レベルで行う資金・技術の提供
- NGOやNPOの活動:教育支援、医療支援、インフラ整備など現地密着型
- 国連機関(UNICEF・WHOなど):国際協調による包括的な支援
🤝 支援の課題点
- 支援が一部の人にしか届かないケースがある
- 長期的に依存状態が生まれ、自立の妨げになることも
- 現地の文化やニーズを無視した「押しつけ型支援」では効果が薄い
🌱「自立支援」が今注目されている理由
- 現地の人々が自分たちで問題解決できるようにする
- 教育・職業訓練・女性の自立などを通じて、長期的な成長を促す
- SDGs(持続可能な開発目標)の基本理念にも合致
支援は「助けること」ではなく、「ともに考え、育てていくこと」。
その視点が、これからの発展途上国支援には不可欠となっています。
まとめ:課題の背景には“複雑な歴史と構造”がある
発展途上国が抱える課題は、単なる「経済の遅れ」や「お金がないこと」だけではありません。
そこには、長年の植民地支配・制度の未整備・教育や医療への投資不足・政治の不安定・社会的な差別構造など、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。
そしてそれは、個々の国の努力だけでは解決しきれないというのが現実です。
だからこそ、国際社会の支援や協力が求められており、同時に「自立できる力を育てる支援」の視点も重要です。
世界の課題を「他人ごと」とせずに、「知ること」からはじめる――
その第一歩が、この記事を読んでくださったあなたのような存在なのかもしれません。
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